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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.49
2020年12月25日
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目次

エグゼクティブサマリ

本稿を執筆中の12月8日、2つのニュースが目に入りました。1つ目は、中国の武漢で最初に確認された新型コロナウイルスの感染者が発症したとされる日から、ちょうど1年になるというニュース。2つ目は、今日(12月8日)から英国で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まったというニュースです。2020年は新型コロナウイルス一色の1年となりましたが、年末になってようやく沈静化に向かう期待が持てるニュースに接することができました。

この1年で人の考え方や価値観が大きく変わったと感じます。数年間で起きる変化が1年で起きたようにも感じています。急激に変わった新しい考え方のもとでも、従来の利便性をそのままに、不便を感じることなく享受できているのは、ネットワーク、セキュリティ、AIなど、情報通信技術が大きく貢献しているのは言うまでもありません。一方で、新型コロナウイルスによって、健康や生活に大きな支障が出た方が多くいらっしゃいます。また、今でも多数の医療関係者が、最前線で危険と向き合いながら職務を継続されています。そういった社会の痛みを和らげるうえでも情報通信技術が役に立てるよう、情報通信産業に従事する者として努めていきたいと思います。

「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術を紹介しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されています。

1章の「定期観測レポート」は、IIJインフラから見るインターネットの傾向の2020年版です。インターネット上のIPv4及びIPv6経路数、利用者に提供しているフルリゾルバから得られるDNSのクエリの解析、IPv6及びモバイルのトラフィック、RPKIを利用したBGP ROVの導入について、レポートを作成しました。新型コロナウイルスのインターネットトラフィックへの影響は本レポートのVol.47(https://www.iij.ad.jp/dev/report/iir/047.html)、Vol.48(https://www.iij.ad.jp/dev/report/iir/048.html)でも取り上げていますが、今回の分析では、過去の分析とは違った傾向も出ています。

2章の「フォーカス・リサーチ」では、耐量子計算機暗号の最新動向を紹介します。耐量子計算機暗号については、2016年6月に本レポートのVol.31(https://www.iij.ad.jp/dev/report/iir/031.html)の「フォーカス・リサーチ」でも取り上げており、今回の記事はそのアップデート版となります。2016年から始まっている米国NISTによる耐量子計算機暗号のコンペティションの状況に加えて、耐量子計算機暗号の安全性や量子暗号と耐量子計算機暗号の違いなどを解説しています。CRYPTRECの委員でもある筆者ならではの洞察やエピソードも含まれており、現代のインターネットを支える暗号技術に関心のある方には興味深く読んでいただけると思います。

3章の「フォーカス・リサーチ」は、筆者のアイデアによる「クエリサービスの開発」についてのレポートです。アプリケーションがコンテナ型仮想インフラを利用して、従来の課題を解決するなか、データベースに関しては、データの永続性・可用性・パフォーマンス面に課題があり、最適解といえる手法がありません。そこで、データベースについても、コンテナ型仮想インフラの特徴である柔軟性を実現すると共に、データの永続性・可用性をもたらすサービスを企画・実装したのが、本稿でご紹介する「クエリサービス」です。まだプロトタイプですが、今後のサービス化も検討していきたいと考えています。

IIJは、このような活動を通してインターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を行っています。今後も企業活動のインフラとして最大限に活用いただけるよう、様々なサービスやソリューションを提供し続けてまいります。

島上 純一

執筆者プロフィール

島上 純一 (しまがみ じゅんいち)

IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。


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