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2012年2月21日
「研究開発用データセンター設備」でご紹介した、クラウド向けデータセンター実証実験では、コンテナ型データセンターそのものの実験だけでなく、その中に収容しているサーバやネットワーク機器等の実験用設備を利用して、将来、標準化や普及が期待される技術についての実証実験や、新技術の開発等も行っています。
今回は、それらの中から、この設備自体の管理に採用している、オープンソースのクラウドIaaS基盤管理ソフトウェアである「OpenStack」と、物理サーバに対してOSを効率的にデプロイするための仕組みである「Orchestra」の2つのプロダクトをご紹介します。
OpenStackは、クラウドのIaaS基盤を管理するためのオープンソースソフトウェアで、Iaas環境を構築・管理する仕組みを比較的容易に利用者に提供します。
開発コミュニティの構成メンバーは2012年2月時点で、企業149社、個人としては2,300名を超えており、今後、業界標準となる可能性を持っている有望なプロダクトです。
OpenStackが提供する様々な機能は、高度にコンポーネント化されおり、個々の機能(例えばOpenStack ObjectStorage)だけでも利用できる点が大きな特徴です。
また、ソースコードだけでなく、開発プロセス自体がオープンとなっており、企業・個人を問わず開発コミュニティに参加するための敷居が低い点も、他のオープンソースプロジェクトと一線を画しています。
Orchestraは、ubuntu 11.10から提供されるようになったデプロイシステムです。クラウド上にある仮想マシンの利用が急速に進んでいる昨今ですが、性能要件等から、どうしても物理サーバを占有しなければならないようなケースも少なからず存在しています。しかし、クラウド基盤そのものや、その一部を管理する目的で作られたOpenStackのようなIaaS管理ソフトウェアは、物理サーバにOSをインストールするような単純なデプロイ機能を持たないものが多いのが実状です。
デプロイシステムは、将来的にIaaS管理ソフトウェアに包含されていく可能性もありますが、現時点で数百台のサーバを短期間で利用可能な状態に準備するためには、Orchestraのような物理サーバに対するデプロイシステムが必要となります。
IIJの実験用設備のうち、クラウド環境のIaaS部分(仮想マシン、ネットワーク、ストレージ)の管理については、OpenStackで行っており、そのコンポーネントの中でも、以下の6つを利用(一部予定)しています。
コンポーネント | 提供する機能 |
---|---|
OpenStack Compute | 仮想マシンを管理する機能 |
OpenStack ImageService | 仮想マシンイメージを管理する機能 |
OpenStack ObjectStorage | 分散ストレージ機能 |
OpenStack Dashboard | WebUI機能 |
OpenStack Quantum | ネットワーク基盤を管理する機能 |
OpenStack Identity | 統合認証機能 |
これらのコンポーネントからOpenStackのみで設備すべてをカバーできるのが理想ですが、物理サーバに対するOSインストールや初期設定等の機能を、現時点のOpenStackは公式に提供していません。
しかし、実験や研究の要件として、物理サーバにOSをインストールして単純に利用したいという要望は当然ながら存在しますし、そもそも仮想環境の土台となるホストサーバも物理サーバの上に構築しなくてはなりません。そこで、IIJでは、OpenStackが機能として持っていない、物理サーバへのOSインストール・初期設定の管理にOrchestraを利用しています。
実験用設備の性格上、「作って、試して、壊して、また作る」という繰り返しを、いかに効率的にストレスなく行えるかというのが重要な要素の1つとなるのですが、IIJでは、今回ご紹介した2段構成に独自の実装を組み合わせることにより、「作って、試して、壊しても大丈夫」で「自由」に使える実験用設備を実現しています。
執筆者プロフィール
齊藤 秀喜(さいとう ひでき)
IIJ サービス本部 プラットフォームサービス部/サービスオペレーション部を兼務
IIJ GIOのシステム運用に従事するかたわら、IaaS基盤技術の評価・検証を行っている。日本OpenStackユーザ会メンバーとしても活動中。最近の趣味はフィルムカメラ。家族は妻ひとり、猫いっぴき。
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