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2012年7月17日
2012年7月、各電力会社からの節電要請がスタートしました。また、電気料金の値上げも今後更に行われる可能性が高くなっています。家計はもちろんのこと、企業においても節電対策への取り組みはより一層強化する必要があると思われます。ここでは、最近の電力監視・管理システムのトピックをご紹介しつつ、弊社の取り組みをご紹介します。
まず、電気料金の値上げにより企業から注目されている、電力の「デマンドレスポンス」について、説明します。
※ 以下の説明は2012年7月時点での料金体系であり、将来変更される可能性があります。
家庭用の電気料金は、あらかじめ契約したアンペア数(40Aなど)で決まる「基本料金」と、使用量に応じて決まる「電力量料金」があることはご存知かと思います。このうち電力量料金は、例えば東京電力の従量電灯Bプランの場合、1ヵ月の電力使用量に応じて単価が上がる仕組みになっています。
一方、工場など向けの「特別高圧電力B」といったプランでは、「過去30分間に使用した電力のピーク値」に基づいて電力単価が決められてしまいます。つまり、普段は30分間で900kWhしか使っていないにも関わらず、たまたま30分間に1,000kWhを超えて使用してしまった日があるとすると、その月の基本料金の契約単価がピーク電力である1,000kWhを基準に計算されてしまうのです。
このため、工場の電力監視システムでは、最大需要電力(デマンド)を定常的に監視し、想定したピーク電力の上限値に達しそうな時に警報を鳴らしたり、実際に電力をカットして需要を抑えたりする、といった制御が必要となります。これが「デマンドレスポンス」です。
一方、電力の「見える化」実現に向けてよく話題に上るのは、スマートメーターです。これは簡単に言うと、電力メーターに通信機能が付いているもので、電力会社とのデータ送受信に使えるほか、家庭内の電気機器の制御といった様々な用途への活用が期待されています。
このスマートメーターの通信機能には、2つのルートが用意されています。
1つ目がAルート。これはスマートメーターと電力会社を直接結ぶ経路になります。このAルートを介して、自動検針の実現が可能となります。毎月人手を介して検針していた手間が大幅に省力されることになるわけです。更に、検針等のモニタリングのみではなく、こちらもデマンドレスポンス的な考え方を元に、動的な制御を行うことも可能となります。例えば、
といった応用例が考えられます。つまり、リアルタイムの電力利用状況と契約情報をリンクし、柔軟な制御を行うことが可能となるのです。
もう一つ用意されているのがBルート。これは、宅内の通信装置を介して電力データのやり取りや制御を行うためのルートになります。このBルートは、昨今のHEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building and Energy Management System)などといったキーワードで開発されている機器との連携で、様々な応用が期待されています。例えば、現在の電力見える化システムは、一般的に分電盤の配線にクランプを挟み込んで電力を測ったり、電力測定用コンセントタップなどを利用したりする方式が用いられますが、スマートメーターから正確なデータをもらえば、最も確実なデータを得られます。更に、電力会社に依存しない、独自のデマンドレスポンスの実現も可能です。
家電機器の制御という観点では、最近注目を集めている技術として「ECHONET Lite」という規格もあります。家電機器の制御用プロトコルとして従来からあったECHONETの仕組みを簡略化し、より手軽に実装できるようにしたもので、2012年3月に規格が一般に公開されました。スマートメーター、HEMS、ECHONET Liteといった各技術要素を組み合わせることで、電力の「見える化」から一歩進んだ「デマンドコントロール」が可能になる姿が見えつつあります。
ここで紹介するのは、東光電気株式会社が開発したインテリジェントネットワークコントローラ「STiNC Ⅱ」という製品です。スマートメーターのBルートを用いて様々な活用を考えていく際、具体的に電力をまとめてモニタリングし、家庭やオフィスのネットワークレイヤとの結合が行える製品が必要となります。STiNC Ⅱは、そのために開発された製品です。
※ 2012年7月発売予定
入出力端子としてMicroLAN、RS-485、デジタルI/O、USBといった豊富な端子を揃え、多様なセンサ機器と直接接続が可能であり、更にエネルギーマネジメントに必要なセンサデータのグラフ表示や、デマンドコントロール機能を持つWebUI(エコWeb)を標準で搭載しています。
実はこの製品、IIJが提供するSMF(SEIL Management Framework)に対応という大きな特徴を持っています。SMFとは、最新の技術動向「サービスアダプタ統合管理システム『SMF(SEIL ManagementFramework)』」でご紹介しているように、機器のゼロコンフィグや集中監視・管理を実現するための仕組みのことです。STiNC Ⅱもセンサ設定やネットワーク設定など、各種設定情報に基づいて動作していますが、これらの設定情報を起動時にサーバから取得して動作させることを可能にしています。 SMF対応にあたっては、東光電気様にIIJが提供するライブラリ「libarms」を組み込んでいただき、管理用Webサービス「SACM」をカスタマイズして提供することで実現しました。
SMFの仕組みで、現在は機器のコンフィグ管理とオペレーションの集中管理を実現していますが、将来的には電力データやセンサデータなど各種の汎用データも取り扱えるような拡張を行い、それらをクラウド側に簡単にストアできるような仕組みの実現を目指していきたいと考えています。
次回は、このSACMについて詳しくご紹介する予定です。ご期待ください。
執筆者プロフィール
齋藤 透(さいとう とおる)
IIJ プロダクト本部 アプリケーション開発部 応用開発課
新卒でIIJ入社以来、一貫してSEIL、SMFの開発に携わり、はや10年。現在はSMFのマルチデバイス対応などを目指すSMFv2のプロジェクトリーダとして日々奮闘中。週末は二人の男の子の遊び相手をしつつ、隙を縫って趣味のDIYや料理に精を出している。
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