ページの先頭です
我が国の電気通信事業を律する「電気通信事業法」は2015年に改正されました。施行から3年を経た時点で、改正後の規定の施行状況を検討し、必要に応じて措置を講ずるものと定められています。それを踏まえて、去る8月23日、情報通信審議会に対して「電気通信事業分野における競争ルールなどの包括的検証」が諮問され、これから2030年頃を見据えた本格的な検討が始まります。
内容は、通信ネットワーク全体に関するビジョン、通信基盤の整備などの在り方、ネットワーク中立性の在り方、プラットフォームサービスに関する課題への対応の在り方、モバイル市場の競争環境の確保の在り方、消費者保護ルールの在り方など、多岐にわたります。
インターネットは、ネットワークの仮想化やソフトウェア制御などの技術の発展もあり、多様なプレーヤーによる技術開発、サービス開発が進んでいます。今後、AI、IoT、5Gといった技術の本格的な利用が進むなか、技術開発のみならず、法制度などの整備についても注視していきたいと思います。
「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術をご紹介しており、我々が日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されています。
1章の定期観測レポートは、ブロードバンドトラフィックレポートです。これはIIJが運用しているブロードバンド接続サービスのトラフィックを分析した報告で、2009年から毎年お届けしているものです。総務省から公表される「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算」はトラフィック全体の集計ですが、小誌では利用者の1日の使用量の分布やポート別使用量の分析を行っています。トラフィックの伸びは鈍化しているものの、継続的に増加しており、4年程前から利用が大きく拡大しているHTTPSも増加している、という結果が出ています。WebブラウザがHTTPを安全でないと表示したり、検索サイトにおいてHTTPのみのサイトの優先順位が下がる、などという動きも出ており、HTTPからHTTPSへの移行は、ますます進むと思われます。
2章では、フォーカスリサーチ(1)として、非定型情報を扱うための自然言語処理とトピックモデルの実験をご紹介します。セキュリティ対応においては、IPアドレスのブラックリストやSCAPなど、定型化されて機械的な処理が容易な情報は、支援システムで広く活用されていますが、画像や自然言語で書かれた文書など、機械的な処理がむずかしい情報の活用には、まだ課題が残されています。そこで、セキュリティ対応において、そのような非定型情報を活用するためのレコメンドシステムのプロトタイプを開発しました。満足のいく結果は得られなかったものの、一定の条件下では活用できるという手応えを掴むことができました。
3章では、フォーカスリサーチ(2)として、Kubernetesを取り上げます。クラウド関連の情報を収集するなかで、dockerやKubernetesといった言葉を聞く機会が増えていると思います。どちらも昨今のコンテナ技術の中核となるものです。ここでは、dockerとKubernetesの機能や役割、IaaSやハイブリッドクラウドにおいてKubernetesを利用する意義を説明したうえで、IIJが構築したIKE(IIJ Container Engine for Kubernetes)をご紹介します。実際にKubernetesを利用したコンテナクラスタ環境はどのようなもので、どのような狙いを持っているのかを解説していますので、これから取り組もうとされている皆様には参考になるのではないでしょうか。
IIJは、このような活動を通じて、インターネットの安定性を維持しながら、日々改善・発展させていく努力を続けています。今後も、お客様の企業活動のインフラとして最大限にご活用ただけるよう、様々なサービス及びソリューションを提供してまいります。
執筆者プロフィール
島上 純一 (しまがみ じゅんいち)
IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。
ページの終わりです