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第5世代移動通信システム(以下、5G)に関するニュースが増えてきました。アメリカではVerizonが2018年10月より一部都市で5Gのサービスを開始しています。サービス名は「Verizon 5G Home」といい、移動通信ではなく、家庭向けのブロードバンドサービスで、FWA(Fixed Wireless Access)と呼ばれる利用方法です。一方、韓国でも移動通信3社が2018年12月にサービスを開始するとのニュースがありました。こちらは、まず産業向けのソリューション提供を目指しているようです。
日本においては、2020年に本格的な5Gのサービスの開始が予定されていますが、移動通信3社は、2019年中に5Gのプレサービスを開始するとしています。2018年10月に開催された総務省の会合で各社が明らかにしたプレサービスの内容は、地方創生に関わるものや、競技場のVRなど多様でした。
プレサービスに先立って、2019年3月末までに5Gのための周波数が割り当てられる予定で、その指針が去る11月に総務省から公開されました。全国で使われる周波数として、3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯から計10枠・1,800MHz幅が提示されたほか、自営用などで利用できる割当枠について検討するとのことで、4.5GHz帯に200MHz幅、28GHz帯に900MHz幅の周波数が残されました。この周波数がどのように割り当てられるかは、これからの議論次第となりますが、従来の全国系移動通信事業者以外からも特徴のあるサービスが提供されることが期待されます。
「IIR」はIIJで研究・開発している幅広い技術のご紹介を目指しています。私たちが日々のサービスの運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げる「フォーカス・リサーチ」から構成されています。
1章の定期観測レポートは、IIJインフラから見るインターネットの傾向と題して、IIJのネットワークインフラで観測している各種データのなかから、BGPの経路数、DNSの問い合わせ数、IPv6トラフィック、モバイル・トラフィック、バックボーン・トラフィックに関する分析を紹介しています。BGPの経路数は、IPv4アドレス在庫の枯渇にともない、移転を目的としたアドレスブロックの分割が進んでいるためか、/22、/23、/24の経路が増加していることや、増加を続けている32-bit only ASがIPv4のみで運用されていることなど、興味深い分析結果が出ています。また、BGP経路数、DNS問い合わせ、各種トラフィックのいずれからも、IPv6の利用が進んでいることが読み取れました。
2章では、フォーカス・リサーチ(1)として、詐称URLの判断に深層学習を応用する試みを紹介しています。インターネットを爆発的に普及させ、私たちの社会活動に大きな影響を与えたのはWWWであることに間違いはありません。そのように社会に深く浸透したWWWの悪用例として、オンラインサービスや銀行のサイトの詐称行為が挙げられます。このような詐称サイトへのアクセスから利用者を守ることは、ネットワークサービスの提供に携わる者にとって重要な課題の1つです。詐称サイトの判定には多くの手法が提案されています。今回、ご紹介するのは、簡単なニューラルネットワークモデルによる検証ではありますが、高い精度でURLの分類が行えました。
3章のフォーカス・リサーチ(2)では、海底ケーブルを取り上げています。インターネットにおける国際データ通信の99%は、海底ケーブルによって運ばれており、海底ケーブルは、グローバルなインターネットにおいて非常に重要な存在です。本稿では、海底ケーブルに関する公開情報から、海底ケーブルの成長と現状を明らかにし、海底ケーブルの障害によるインターネットへの影響について、実際の障害における各種の観測データをもとに考察する手法を提案しています。
IIJでは、このような活動を通じて、インターネットの安定性を維持しながら、日々改善・発展させていく努力を続けています。今後も、お客様の企業活動のインフラとして最大限にご活用いただけるよう、様々なサービス及びソリューションを提供してまいります。
執筆者プロフィール
島上 純一 (しまがみ じゅんいち)
IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。
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