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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.44
2019年9月26日
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目次

エグゼクティブサマリ

8月23日の午後、Amazon Web Services(AWS)の東京リージョンにおいて、6時間ほどサービスが停止するという事故がありました。世界有数のクラウド事業者のサービスが停止したことで、非常に多くの企業のシステムやサービスが影響を受け、一般の利用者がそれらの企業のサービスを受けられない状態になりました。インターネットは究極の分散ネットワークである一方、クラウドの普及によってデータ処理の集中が加速しています。AWSという単一企業の事故により、あれだけ広範な影響が出たことで、インターネットにおける集中をあらためて認識させられた次第です。また、29日にはいくつかのISPにおいて、MicrosoftのWindows Updateによる急激なトラフィックの増加が原因と見られるインターネットの通信障害が報告されました。本件も単一企業に関する活動が、インターネットというインフラに大きな影響を与えたことにおいて、印象的な事件でした。

「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術の紹介を目指しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定のテーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されています。

1章の「定期観測レポート」は、恒例のブロードバンドトラフィックレポートです。本レポートは2009年の「IIR」第4号から毎年掲載しているもので、インターネットのトラフィック動向を10年以上遡って見ることができる貴重なデータであると自負しています。本年も固定ブロードバンドサービス、モバイルサービス共に昨年と同等の増加が観測されたものの、ここ数年、利用者ごとの利用量は大きく変化していないという結果になっています。

2章の「フォーカス・リサーチ」では、インターネットを支える重要な基盤の1つであるDNSを取り上げました。IIJは今年5月からDNS over TLS(DoT)、DNS over HTTPS(DoH)による名前解決を行う「IIJ Public DNSサービス」を、IIJユーザだけでなく、どなたにでも使っていただけるサービスとして提供しています。本稿では、DoT/DoHの技術的内容やDNSSECとの違いを説明したうえで、「IIJ Public DNSサービス」の実装や実装上の工夫について解説しています。

IIJはこのような活動を通じて、インターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を続けています。今後も企業活動のインフラとして最大限に活用していただけるよう、様々なサービス、ソリューションを提供し続けてまいります。

島上 純一

執筆者プロフィール

島上 純一 (しまがみ じゅんいち)

IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。


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