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2019年最後の「IIR」をお届けします。今年の日本は天災、特に雨に関わる災害が多く発生しました。8月の九州北部豪雨、9月に関東を中心に広範な被害をもたらした台風15号及び19号は、記憶に新しいところです。地球温暖化という言葉を聞くと、気温の上昇がクローズアップされがちですが、大気中の温室効果ガスが増えることにより、大気の状態が全体的に変化し、雨の降り方も徐々に変わっていくのだそうです。
情報通信の業界においても、機器の省電力化、データセンターの省エネルギー化などの対策が行われています。そうしたなか、理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」の試作機が、消費電力性能を示すランキング「Green 500」で世界一を実証したとのニュースがありました。
情報通信機器の省エネルギー化、情報通信を利用した社会の省エネルギー化など、持続可能な社会を実現するうえで、情報通信が果たせる役割は多く、私たちも技術開発に取り組んでいきたいと考えています。
「IIR」では、IIJで研究・開発している幅広い技術を紹介しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されます。
1章の「定期観測レポート」は、IIJインフラから見るインターネットの傾向の2019年版です。インターネット上のIPv4経路数の状況、利用者に提供しているフルリゾルバから得られるDNSのクエリの分析、IIJバックボーンにおけるIPv6の利用状況、自然災害発生時のモバイル網やフレッツ網のトラフィック状況、IIJのバックボーンの歴史などを紹介しています。
IPv4においては、経路広報されているユニークなアドレス数の減少が初めて観測され、今後の注視が必要です。IPv6は、その利用が着実に進んでいることが、トラフィックの量や多くの事業者による利用の増加を通して確認できました。また、台風19号が通過した10月12日前後のトラフィックを分析したところ、明らかに平時とは違った傾向が出ていることが分かりました。
2章の「フォーカス・リサーチ」では、私たちがインシデントレスポンスやフォレンジックでメモリ解析を行う場合に利用しているVolatilityにおいて、Linuxのメモリイメージを取得するツールを解説しています。Linuxのメモリイメージ取得ツールのうち、LiMEとcrashを紹介するとともに、ディスクフォレンジックに極力影響を与えないメモリイメージ取得方法についても解説しています。
IIJは、このような活動を通してインターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を続けています。今後も企業活動のインフラとして最大限に活用いただけるよう、様々なサービスやソリューションを提供し続けてまいります。
執筆者プロフィール
島上 純一 (しまがみ じゅんいち)
IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。
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