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去る7月、政権政党である自由民主党から、政府が保有するNTT株の売却の是非について本格的に検討を始めるとの発表がありました。NTTの株式の3分の1以上は政府が保有することがNTT法で義務付けられていることもあり、NTT法のあり方や日本の情報通信産業全体の国際競争力強化に関して、秋にも提言をまとめたいとしています。
また総務省は、情報通信審議会に対し、「市場環境の変化に対応した通信政策の在り方」について諮問し、来年夏を目途に答申を行うことを要望しています。それを受けて設置された通信政策特別委員会が、「2030年頃に目指すべき情報通信インフラの将来像及び政策の基本的な方向性」とそれに関連する事項について、広く提案・意見を募集しています。
電気通信が国営の事業として営まれていた我が国において、その事業を担ってきたNTTが民営化され、電気通信事業に競争が導入されたのが1985年。当時から現在に至るまでに、電気通信の利用形態、それを通じて提供されるサービスや便益、社会における位置づけや重要性、そこで活躍するプレーヤーなど、情報通信を取り巻く環境は様変わりしました。その要因のひとつがインターネットであることは間違いありません。
NTTは日本の情報通信インフラを支える重要なプレーヤーであることは言うまでもありませんが、日本のみならず世界の情報通信の在り方をも俯瞰した議論が行われるよう期待します。
「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術を紹介しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されます。
1章の定期観測レポートは、ブロードバンドトラフィックレポートです。このレポートでは毎年、IIJの固定ブロードバンドサービス及びモバイルサービスのトラフィックを分析しています。新型コロナウイルスの影響により、トラフィックが大きく伸びた2020年以降、目立った変化はないものの、トラフィック量もポート別使用量も着実に変化していることが、数字からも見て取れる結果となっています。
2章のフォーカス・リサーチでは、「システムソフトウェアの通信分野における2010年頃からの研究まとめ」と題して、システムソフトウェアの通信処理の高速化について解説します。ハードウェアの処理能力向上により、ハードウェアを制御するシステムソフトウェアの、特に通信に関する処理の効率性が重要になっています。そこで、システムソフトウェアの通信処理の概要と効率化の研究について説明し、最後にIIJ技術研究所の取り組みを紹介します。
3章のフォーカス・リサーチは、IIJの創業30周年特別コンテンツとして、バックボーンネットワーク、DNSに続いて、IIJのクラウドサービスの変遷を取り上げます。IIJでは創業以来、インターネット接続に付随する様々なサービス提供のためにサービスホストを運用してきました。また、クラウドやIaaSという言葉が一般的になる前から、コンピューティングやストレージのリソースをサービスとして提供してきました。それらに利用されるサーバ、ストレージ、ネットワークが統合されたインフラは、時代の要請によって進化しており、その変遷を紹介します。
IIJは、このような活動を通してインターネットの安定性を維持しながら、日々、改善・発展させていく努力を行っています。今後も企業活動のインフラとして最大限にご活用いただけるよう、様々なサービスやソリューションを提供し続けてまいります。
執筆者プロフィール
島上 純一 (しまがみ じゅんいち)
IIJ 常務取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任し、2023年5月に退任。2021年6月より同協会の副会長に就任。
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