1992年 IIJの誕生
IIJは日本で最初のISP(Internet Service Provider)として、1992年に誕生しました。
日本全国にインターネットバックボーンを張り巡らせるために、全国のデータセンター(DC)をお借りして、NOC(Network Operation Center)を構築していきました。
NOCのあるDCは、日本最大のIIJバックボーンに直結できるため、広帯域のインターネット接続を必要とするサイトにとっては非常に快適な環境です。そのようなサイトを対象として、1995年よりハウジング及びホスティングサービスを開始しました。
1998年 広域LANサービスの開始
90年代後半に入ると、システム構築と運用品質の高さが評価され、徐々に企業システムを手掛けるようになっていきます。1998年には、企業のWAN回線を提供するために株式会社クロスウェイブ コミュニケーションズ(CWC:2003年12月NTTコミュニケーションズに事業譲渡)を設立し、レイヤー2でのWANサービスである広域LANサービスの提供を開始しました。
広域LANサービスは、ユーザ側からイーサネットでそのままWANに接続され、距離に依存せずポート数で課金されます。現在は各通信事業者から広域イーサネットサービスが提供されていますが、高速デジタル専用線によるWAN構築で距離による課金が主流だった当時の企業にとっては衝撃的なものでした。
CWCは急激に販売を拡大し、自営網拡大のために全国に局舎が必要になっていきました。その時、コストをかけずに局舎を構築するために使ったのがコンテナです。24時間365日運用しているネットワーク機器を設置するのに、コンテナが十分に役に立つことはこの当時から分かっていました。2003年にCWCがIIJグループから離れた後も、エンジニアの中にはこれをうまくデータセンターで活用できないか?という思いが残っており、データセンター開発部門で研究を続けていたのです。
1990年代後半 クラウドサービスの萌芽とNHN
90年代後半にはもう1つの大きな動きがありました。Server Side JavaやASPが使えるようになり、DB接続やインターネット決済のインフラが実現されると、動的サイトを利用したECサイト構築が頻繁に行われるようになりました。
ECサイトのシステムアーキテクチャは、どのお客様のサイトでも似たようになります。予め機器を用意して部品化しておき、お客様からオーダーがあったら必要な部品を組み合わせて提供すれば効率が良くなる。そう考えて作ったのが、現在のクラウドサービス「IIJ GIO(ジオ)」の前身である、リソースオンデマンドサービス「IBPS」です。必要な時に必要なリソースを使い、いらなくなったら解約できる。お客様は一切資産保有リスクを持たなくてよい。IBPSは今でいうIaaSそのものでした。
一方でIIJは、多数のサービスの基盤として、大規模なサービス設備を運用管理しています。
この運用管理コストを圧縮するために、標準化と自動化を進め、次世代ホストネットワーク「NHN (Next Host Network)」というサービス基盤技術を独自構築してきました。
2009年にクラウドサービス「IIJ GIO(ジオ)」を開始するまで、10年以上に渡るIaaSビジネスの進化とサービス基盤の進化の過程で、様々な課題を乗り越えてきました。仮想化の適用やプロビジョニングシステム、監視システムの内製、サーバ・ネットワーク・ストレージ設備の大規模更新。IIJ GIOのコスト競争力を更に強化するために、データセンターファシリティと電気代のコストダウンが最も効果が大きいということも分かってきたのです。
2000年代 水冷から外気冷却へ
さて、コンテナの研究を継続していたデータセンター開発部門のその後です。
IIJサービスの拡大に伴い、都市型のデータセンター(DC)だけでは大規模な設備投資のスピードにいずれ耐えられなくなることが分かってきました。
また、IT機器の消費電力の拡大とそれに伴う空調の消費電力の拡大が社会問題になることも予見できました。
そこで、当時、効率が良いといわれていた水冷方式をベースにコンテナの研究を続けましたが、設備投資、運用コストが思ったほど下がらないことが分かってきました。一方、効率の良い冷却方式として外気冷却も既に知られていましたが、建物の構造上の問題等から、日本では通年に渡って主冷却としてDCで導入した事例はありませんでした。しかし、米国での調査の結果、外気を主冷却として使い始めているDCもあることから、劇的に消費電力を下げるために、外気冷却方式の実現に向けて大きく舵を切ったのです。
といっても、参考にするものもなく、最初は今とはまったく別の構造のコンテナから、研究が始まりました。