コスモ石油、昭和シェル石油、住友商事及び東燃ゼネラル石油の4社のLPガス事業の統合により、2015年4月に誕生したジクシス。LPガス元売トップクラスの実績を誇る4社それぞれの強みを発揮し、社会基盤を支えるLPガスの安全・安定供給を強化するとともに、次世代に向けた新たな価値創造を目指している。
シナジー効果を最大化するためには、会社の枠組み構築など4社の合意形成が不可欠だ。しかし、文化の異なる4社の事業を統合するのは容易ではない。全体の枠組みが決まらなければ、新会社の規模感や業務に必要なITインフラの要件も見えてこない。「事業統合に向けた話し合いが進む中、当初はITに対して、どれだけの人とコストを費やすべきかが分からない状態だったのです。その状態で自前のインフラを持つという決断は、大きなリスクになりかねません」と同社の吉田真典氏は語る。
そこで同社が選択したのが"持たざるIT"である。「業務に必要な『オフィスIT』をすべてサービスとして利用する形にすれば、短期間でIT環境の整備が可能です。自前でインフラを調達したり、システムを構築する必要がないので、所有リスクも回避できます」と吉田氏は狙いを述べる。
新会社に求められるITインフラの要件が見えてきたのは2014年8月後半。新会社の設立時期は2015年4月と決まっていたため、対応を急ぐ必要があった。限られた時間の中、同社はオフィスITをサービスとして利用する方針に基づいて複数ベンダーの提案を募り、比較検討を行った。その結果、選定されたパートナーがIIJである。
IIJの提案は同社の要件を十分満たし、なおかつ「コスト」と「導入スピード」で他社提案を上回るものだったという。「初期構築コストは他社の提案に比べ1/3程度。5年間の運用を含めたトータルコストも、最も安価に抑えられるものでした」と吉田氏は評価する。
導入スピードを支えているのが、IIJの多様なサービス群だ。サーバ、ネットワークはもちろん、Active Directoryをはじめとする認証基盤、メールやインターネット接続環境、セキュリティサービスのほか、PCや固定電話、スマートフォン、複合機に至るまで、業務に必要なサービス及びインフラのすべてをワンストップで提供できる。こうしたサービスの提供を通じ、多くの企業のIT環境の変革に貢献してきた実績も豊富にある。
「コミュニケーション基盤にはクラウド型グループウェアのMicrosoft 365を利用する方針が決まっていましたが、IIJは他社クラウドなどの外部サービスともシームレスに連携が可能です。オフィスITのサービス化を安心して任せ、短期間でリスクの少ない導入が可能になると判断しました」(吉田氏)
現在、ジクシスはグループ会社を含めた9つの拠点でPC約230台、スマートフォン約130台、固定電話を約200台導入。主要な業務基盤をIIJ GIOに集約し、デバイスも含めたすべてのオフィスITを「サービス」として利用している。
具体的には、本社及び支店は二重化されたネットワークを介してIIJ GIOとつながっており、IIJ GIOの仮想サーバ上に構築したActive Directory、認証を統合するActive Directoryフェデレーションサービスなどのサーバ群はMicrosoft 365と連携している。さらに、Microsoft 365のExchange Onlineによるメール通信はIIJセキュアMXサービスと連携し、セキュアなメールのやりとりを支えているのである。
また、オフィスITの実現には、IIJの豊富なサービスと実績に加え、柔軟な対応力も大きな力になった。
会社の設立日である2015年4月に向けて、極めて短期間でPCなどのデバイスを必要台数分調達・設定するとともにWebやメールの環境、業務を支えるサーバ環境なども迅速に構築する必要があった。「約6ヵ月で、すべてのオフィスITを整備できたのは、IIJの迅速な対応力のおかげです」と吉田氏は振り返る。
要件の変更に機敏に対応した点も評価している。初期の検討段階ではスマートフォンの利用は考えていなかったが、事業内容が見えてきた段階で、社員のモビリティ向上の必要性が高まった。「IIJはプロジェクト進行中にも関わらず、機器の調達・設定からネットワーク環境の見直しまで柔軟に対応してくれました。その結果、計画通りに新会社の業務を立ち上げることができました」と吉田氏は満足感を示す。
導入後のサービスは安定稼働しており、大きなトラブルは一度も発生していない。煩雑な運用管理に人員を割く必要がないので、本来の業務に注力できるのも大きなメリットだ。
今後はBYODを含めたモバイル環境の強化と、クラウドサービスの活用拡大を考えている。「他のSaaSの利用も視野に入れ、利便性とセキュリティの両立を図るシングルサインオンの仕組みを実現したいですね。より最適なIT利用を加速するため、今後もIIJの提案とサポートには大いに期待しています」と吉田氏は抱負を語った。
※ 本記事は2015年7月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。