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仮想マシンは大きく3つの資源から成り立っています。1つ目は計算機の中核となるCPUとメモリ、2つ目は計算機同士を相互接続するためのネットワーク、最後がシステムやデータを保持するストレージです。これらの資源を柔軟に配置、再配置できる技術が今後の柔軟な仮想基盤の運用に大きく貢献します。
ご存知のとおり、1つ目の資源(CPUとメモリ)の再配置に関しては既に実運用段階です。仮想マシンが前提とする仮想ハードウェア環境はある程度統一することができるので、仮想マシンの仕様が決まっていればそれを実行するハイパーバイザーがどこで運用されていても問題ありません。仮想化技術によっては、動作中の仮想マシンを別のハイパーバイザーに移動させるライブマイグレーションの機能を提供しているものもあります。
2つ目の資源(ネットワーク)の再配置技術については、長らく研究開発が進められてきましたが、Software Defined Networking(SDN)技術がその有力候補として浮上してきました。ネットワークの仮想化と言えば、これまではVLANが標準的に使われてきましたが、データセンターの大規模化に伴いその限界が見えています。SDN技術を使えば仮想マシン単位でネットワークを切り出すことができるようになり、これまでVLANでは実現が困難だった柔軟なネットワーク構成が可能になります。
残る資源はストレージですが、これに関しては今現在よい選択肢が存在しない状況です。仮想マシンに追加する仮想ディスクを提供する技術として、NFSやiSCSIを採用することが多いと思います。ディスクボリューム管理体系の粒度や耐障害性のための二重化などを考慮すると、大規模基盤ではiSCSI製品を選択する場合がほとんどでしょうか。ストレージといってもネットワーク経由で接続しているので、仮想マシンのネットワーク資源が正しく再配置されていれば理屈上はストレージへのアクセスも継続できます。しかしながら、ストレージに保管されたデータは物理的なストレージサーバに固定されたままです。今後、仮想データセンターの考え方に基づく分散運用を想定すると、一度停止した仮想マシンを再起動した際、ハイパーバイザーの資源割り当て状況によっては、これまでとは異なるデータセンターで再起動する可能性があります。ストレージ資源がどこかの機器に固定的に割り当てられていると、遠隔地で起動した仮想マシンの性能に影響を与えてしまいます。CPUやネットワーク資源と同様、ストレージ資源も運用状況に応じて柔軟に再配置できなければなりませんが、NFSやiSCSIではそういった要求に応えることができないのです。
IIJの技術研究所では、分散運用されているデータセンターを仮想データセンターとして統合運用する環境を念頭に置き、仮想マシンで用いられる仮想ディスクの実データ配置を柔軟に制御できるストレージシステム「UKAI」の研究開発を進めています。
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