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近年、企業ITシステムの新規構築や更改の際に、まずクラウドサービスの利用を検討する、いわゆる「クラウドファースト」という考え方が浸透しています。IDCが昨年10月に発表した「国内Storage in the Cloud市場2013年の実績と2014年〜2018年の予測」というレポートによると、パブリッククラウドサービスとして提供されるストレージ従量課金サービス(Storage in the Cloud)の市場規模は、2013年は158億1,900万円であったものが、その後平均成長率26.7%で成長を続け、2018年には515億6,000万円まで成長すると予測されています。
IIJのクラウドサービス「IIJ GIO」の設備状況を見ると、サービスに必要な物理ストレージ容量は、2013年末から2014年末にかけて約4割も増加しており、サーバ台数よりも大きな伸びを示し始めています。このような急速に需要が伸びているサービスであっても、それを提供するインフラでは、システム全体の可用性を維持しながら、継続的な設備増設や更改への対応、緊急を要する障害・不具合対応、及び、脆弱性対策などを確実に行う必要があります。そのためには設備設計の段階で、耐障害性や保全性、スケーラビリティなどを担保するべく、どのような技術や製品を採用し、どのようなアーキテクチャで構築するのかなど、あらかじめしっかり検討しておく必要があります。
本レポートは、このような状況の中で、サービスプロバイダとしてのIIJが、インターネットやクラウドの基盤を支え、お客様に安心・安全に利用し続けていただくために継続的に取り組んでいる様々な調査・解析の結果や、技術開発の成果、ならびに、重要な技術情報を定期的にとりまとめ、ご提供するものです。
「インフラストラクチャセキュリティ」の章では、2014年10月から12月までの3ヵ月間に発生した主なインシデン トを時系列に並べ、分類し、月ごとに概要をまとめると共に、期間全体での統計と解析結果をご報告します。また、対象期間中のフォーカスリサーチとして、ドメイン名のレジストリ登録情報の改ざん対策について、端末のメモリ内に潜む脅威の痕跡(IOC)をスキャンするツールについて、ID管理技術について、それぞれ解説します。
「クラウドコンピューティングテクノロジー」の章では、IIJが提供しているクラウドサービス「IIJ GIO」の新しいサー ビスの概況の紹介と、それを支えるサービス設備の展開状況や利用傾向をまとめます。また、大規模基盤を構築する際の考え方や、基盤を維持するための設備更改、ならびに、障害・不具合対応などのプロセスなど、サービス基盤を安定して運用するための継続的な取り組みについて解説します。
「ストレージテクノロジー」の章では、サービス基盤が仮想化・クラウド化する流れの中で、位置管理が困難な仮想 ディスクの実データ配置を柔軟に制御できるストレージシステム「UKAI」の研究をご紹介します。まず、UKAIが想定する仮想化基盤の状況についてまとめ、克服すべき課題と、課題を解決するためのアーキテクチャ、ならびにプロトタイプ実装について解説します。
IIJでは、このような活動を通じて、インターネットの安定性を維持しながらも、日々改善し発展させて行く努力を続けております。今後も、お客様の企業活動のインフラとして最大限に活用していただくべく、様々なソリューションを提供し続けて参ります。
執筆者プロフィール
浅羽 登志也(あさば としや)
株式会社IIJイノベーションインスティテュート 代表取締役社長。株式会社ストラトスフィア 代表取締役社長。
1992年、IIJの設立と共に入社し、バックボーンの構築、経路制御、国内外ISPとの相互接続などに従事。1999年より取締役、2004年より取締役副社長として技術開発部門を統括。2008年6月に株式会社IIJイノベーションインスティテュートを設立、同代表取締役社長に就任。2012年4月に株式会社ストラトスフィアを設立、同代表取締役社長に就任。
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