ページの先頭です
ここ数年、ライブラリOS(オペレーティングシステム)と呼ばれるソフトウェアが注目されています。本稿ではこのようなソフトウェアの登場の意味と、技術研究所で研究開発をしているソフトウェアについて紹介します。
OSは計算機の進化と共に発明され、今日までその性能や利便性は向上し続けてきました。そして現在では利用シーンごとに様々な種類のOSが存在し、ソフトウェアの中核をなしています。このように成熟した技術であるのにもかかわらず、なぜ新しいOSやその仕組みが必要となってくるのでしょうか?
計算機という資源を所有する単位は、複数人から個人へと移り変わってきました。そして、今日の仮想化技術による疑似計算機では、人が利用者の単位ではなくサービスやセッション単位に1つの計算機とOSが所有可能となっています。このような用途の計算機は、一般化されたOSではなく極限まで機能を切り詰めたOSが必要とされています。また、起動に要する時間は数ミリ秒という高速さが求められ、そのOSの稼動時間も数秒など、ある特定の仕事を終えるとそのOSの稼動も終了するというような使い方が想定されています。
また、データセンターで利用されるプログラムやHigh-Performance Computing(HPC)と呼ばれる科学技術計算では、そもそも用途や動作するプログラムが限定されていることから、特定の性能向上を目的として、一般化されたOSではなくある計算処理のみの性能向上を目的としたOSが求められています。
このような機能を実現するために、1990年代に研究開発が行われていたライブラリOSが再考されています。ライブラリOSは、エクソカーネルと呼ばれる仕組みを元にしたOSです。エクソカーネルは、現行の多数のOSが採用しているモノリシックカーネルと呼ばれる仕組みとは一線を画したカーネルです。図-1に示すようにOSの核となる部分のカーネルには必要最小限の機能のみを担当させ、大多数の機能をライブラリOSと呼ばれる部分に組み込むことによって、機能追加をしやすくしたり、再利用可能なソフトウェアを実現することができます。エクソカーネルは、カーネルの規模を最小限に留めることで、柔軟な用途に耐えうるOSの設計を支えています。
次節では、このような特徴を持つソフトウェアの実現例として、世界各地で提案されているライブラリOSの特徴を紹介します。
ページの終わりです