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コラム|Column

ネット規制は強化される

2014年は、中国在住の外国人にとっては、ネット規制が次から次へ強化されて、とても素でネットを使えないと思える年だった。振り返るだけでも、「Google・Gmailのサービスが利用不可」「iCloud向けサーバーの中国移転」「セットトップボックス(STB)の官製OS「TVOS 1.0」搭載の義務化とそれに伴うSTBやスマートテレビ向けの政府未認可動画アプリのサービス強制終了」「政府によるWindows 8やMac OS XなどのOS製品、Symantec製品やKaspersky製品などセキュリティ製品の不買」「Instagramの利用不可」など、ただただ不便になるばかりだった。

一方で、中国主催のAPEC(アジア太平洋経済協力)フォーラムや、同じく中国が開催した世界互聯網大会の会場内では、局地的にYouTubeやFacebookやtwitterが繋がるネットワークを開放した。これははじめてのことで、中国のネット検閲を注視する人々は驚いた。

中国政府は通称「サイバー万里の長城(GFW)」を強化し、政府非公認のVPNの締め出しを行っている。今のところ、外国人向けのVPNサービスがターゲットになることはあまりないようだが、今後が不安だと思う中国在住のビジネスマンもいるだろう。

中国のネット規制でアクセスできないサイトといえば、前述のGoogleほか、YouTubeやtwitterやFacebookなどが挙げられる。いわゆるWeb2.0時代のサービスだ。中国国外にあるため、消去したくても自ら消去できず、中国側いわく「中国の揚げ足を取り、否定しよう」とする反中国的書き込みについて、削除要請をしても対応することはない、と中国側は不満を出す。

今となっては、GFWにより、YouTubeやFacebookが繋がらないことは中国関係者の中では広く知られているが、中国でこれらが繋がらなくなったのは、2008年から2009年にかけてのこと。それ以前はNGワードを検索すると、ネットに繋がらなくなることがある程度の規制だった。

ネット規制のスタンスが大きく変わったのが2009年7月のウイグル騒乱だ。この事件発生のタイミングで、FacebookやTwitterにアクセスできなくなった。中国いわく、新疆ウイグル自治区やチベット自治区などの少数民族問題のコンテンツを中国外にアップすることで、テロリストが中国をターゲットにしようとしているという。そのため、中国政府関係者の中には、前述したYouTubeやFacebookなどを「西方敵対勢力」と呼ぶ人もいる。

VPNなどを用いてサイバー万里の長城(GFW)を超えて、外国に中国でのネットの自由を訴えるインテリ中国人がいる。彼らはGoogleやYouTubeやFacebookなどで繋がることのメリットを知っているし、使いこなせる。でも中国人全体ではどれだけ使える人がいるだろう。

WEB2.0のサービスは情報が双方向だからこそ面白い。相手がいてこそ面白い。話し相手となる同胞がいないSNSなんて面白くない。考えてみてほしい。日本人が、どこかの国で流行っている日本人不在のSNSに飛び込んで、現地人と会話して日本の評価を聞こう、日本の真の姿を知ろうなんて人はどれほどいるだろう。ただ検索するだけのYouTubeでも、みたい英語コンテンツを捜し出すことも難しいのではないだろうか。

ネットの民主化希望は希望的観測だった

最もネットで民主化気風が高まったのが、マイクロブログの微博(Weibo)全盛期のころだ。微博は、最新の自身を公開し、友人と密に繋がるネットツールであると同時に、意見を拡散するツールでもあった。

筆者のような中国ITを見続けるモノカキだけでなく、中国の社会問題を追うジャーナリストまでが、意見を拡散するツールである微博を追い、「微博がもたらす中国の民主化」についての記事や書籍を書いた。微博で中国が変わる−−その道のプロは経験と臭覚で、中国人による微博世論を追った。

しかしながら、そう多くの人が、民主化のために壁を越えたとは思わない。そもそもとして民主化を強く望んでいるようにも思えない。

山谷 剛史

1976年東京都生まれ。中国アジアITジャーナリスト。
現地の情報を生々しく、日本人に読みやすくわかりやすくをモットーとし、中国やインドなどアジア諸国のIT事情をルポする。2002年より中国雲南省昆明を拠点とし、現地一般市民の状況を解説するIT記事や経済記事やトレンド記事を執筆講演。日本だけでなく中国の媒体でも多数記事を連載。