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コラム|Column

マネーとゲームの融合

オンラインショッピングとマネーについては、別の回でこれに絞って書いていきたいと思う。ここではもうひとつ、マネーとゲームの融合について振り返ってみたい。

「征途」1タイトルに4000万元を費やしたという
伝説のユーザー「中原暴徒」

海賊版天国と揶揄される中国では、パッケージのゲームを売るビジネスは非常に厳しい。だからこそ中国では、中国ゲーム業界のオンラインゲームへのシフトが早く、無料でゲームは遊べるものの、課金をしないとろくに遊べない仕様となっている。日本のは、まだ無課金でも遊べるものが多数派で、課金をするとより遊べるという感覚であり、対照的だ。例えば、過去に人気となったサンシャイン牧場をはじめとした牧場ゲームを例にとっても、日本のそれは無課金でも遊べる仕様であるのに対し、中国のそれは有料アイテムを買わない限り遊べる仕様ではない。

10年間で30万元をオンラインゲームに費やした
とカミングアウトするユーザー

アイテムや能力を金で買う習慣ができたからこそ、MMORPGをはじめとしたパソコン用の本格的オンラインゲームを遊ぶヘビーゲーマーは、ゲームにお金を多く落とす。実は騰訊や網易など名だたる大手ポータルサイトの稼ぎ頭がオンラインゲームである。iPhoneのゴールドモデルを中国では成金ゴールドという意味の「土豪金」と呼ぶが、そもそも土豪という言葉は、オンラインゲームで金にものをいわせてキャラクターを強化したプレーヤーのことをそう呼んでいた。

キャラクターを育てるには経験値も必要だが、これもゴールドファーマー(金子農夫)と呼ばれる代行業者が本来のプレーヤーに代わって育ててもらう。中国国内外のヘビーゲーマーのニーズに応えるゴールドファーマーは一時期大量に増え、社会問題化した。

網遊代練と呼ばれる業者は、農村や大学でゴールドファーマーを募集をかける。農村部の人件費は安く、また学生に対しても無料でゲームができると呼びかけ、飽きて帰ったところでまた別の学生を雇う。ただし英語ができる学生は、外国のクライアントも多く、業者の評価もあがることから、待遇される。多くの業者は、業務内容を「ネットワーク開発業務」としてSOHOよろしく小さな部屋を借り、ネットカフェのようにパソコンだらけの部屋で、1日12時間、1日2交代制でクライアントの依頼に応え、せっせと経験値を稼ぐ。

ゴールドファーマー問題を取り上げる新聞

農村での雇用の場合、ゴールドファーマーの給料は基本給なし。ゲームの中での通貨単位を得たらお金がもらえる完全能力給だ。ゲームでレアアイテムを得たらリアルマネーでの取引で得た収入だけボーナスとしてもらえる。

外国のクライアントからの送金は、現地の華僑華人を通じて、あらゆる方法を駆使して中国にお金が振りこまれる。その取引額は米中間で年間数億ドル規模とも言われている。中国人の商売根性、華僑ネットワーク、中国国内の激しい貧富の差、そして村々にもある程度普及したITインフラが組み合わさって、中国が国際的なゴールドファーム業を成功させているといえよう。

また、bitcoinが話題になったとき、中国でも一稼ぎする人々が登場した。オンラインゲームの利用で、グラフィックカードを強化しているゲーマーはもともといるが、bitcoinで金が稼げるとわかると、多くのゲーマーが「ハイスペックPCを起動させて、家に居ながらにしてデータマイニングを請負い、Bitcoinを稼ぎ現金と交換する」金稼ぎに参戦した。

Bitcoinの用途のひとつは、「依頼者がデータ群から潜在的な顧客のニーズを採掘(マイニング)する『データマイニング』をネット上で依頼し、その作業を代行したユーザーは対価としてBitcoinを貰う」ことだが、そのアウトソーシング仲介ソフトがいくつも登場。さらに淘宝網では、Bitcoinとリアルマネーの私設両替所が登場。Bitcoinが稼げると話題になるや、パソコンを稼働させるだけでリアルマネーを稼ぐ地盤が完全に出来上がったのだ。

以上の例で挙げたように、安易に稼げるサービスが登場すれば、多くの中国人が参戦する。中国人の苦手な横文字のサービスであろうと、外国向けサービスだろうと、仲介業者が登場することで、多くの中国人が参戦する。これを逆手にとった中国向けサービスリリースを考えてみてはいかがだろう。

山谷 剛史

1976年東京都生まれ。中国アジアITジャーナリスト。
現地の情報を生々しく、日本人に読みやすくわかりやすくをモットーとし、中国やインドなどアジア諸国のIT事情をルポする。2002年より中国雲南省昆明を拠点とし、現地一般市民の状況を解説するIT記事や経済記事やトレンド記事を執筆講演。日本だけでなく中国の媒体でも多数記事を連載。