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気候変動への対応

環境への取り組み方針

IIJグループは、経営理念を継続して実現し、長期かつ持続可能な成長を遂げるために、環境関連法規を遵守し、地球環境に配慮した事業活動を通じて、社会全体の環境負荷低減に取り組むことが重要と認識しております。

IIJは、国内初の商用インターネットサービスプロバイダーとして、日本のインターネットのインフラストラクチャーを創り上げ、インターネット接続サービスの提供を続けてまいりました。インターネットを基盤とする各種サービスやアプリケーションの利用で、30年程前と比較して社会や経済活動は明らかに効率化されています。IIJグループは、インターネットやクラウドコンピューティングなどネットワーク社会を支える信頼性の高いサービスを安定的に提供し続けることで、社会活動の更なる効率化と社会全体の環境負荷低減へ貢献をしてまいります。

一方、これらのサービス提供にあたり、電力の利用は不可欠であり、多くの電力が消費されるデータセンターにおいて、温室効果ガスの削減を推進しカーボンニュートラルの実現に取り組むことが求められています。IIJは自社データセンターを「カーボンニュートラル データセンター」のリファレンスモデルとするべく、2030年に向けた再生可能エネルギーの利用率向上、およびエネルギー効率向上の目標を設定し、さまざまな取り組みを推進しています。また、サービス提供に必要となる機器・サービスの外部調達についても、サプライチェーン全体での温室効果ガス低減に配慮した調達活動を推進するように努めます。

IIJは、これら活動を全社的取り組みとして推進するため、社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、環境負荷低減に向けたPDCA活動を進めるとともに、ステークホルダーへの充実した情報開示に取り組んでまいります。

IIJは、2021年6月の改訂後コーポレート・ガバナンスコードの趣旨を踏まえ、上記取り組み方針に基づき、TCFD等の枠組みに基づく開示の充実を進めてまいります。

エネルギー効率の向上

近年、気候変動問題は国際社会が喫緊に取り組むべき重要な課題となっており、企業にも温室効果ガスの排出削減が一層求められるようになっています。各国のCO2排出量において、エネルギー起源のCO2が占める割合が多いことから、不必要なエネルギーの利用を減らし、効率的に利用することが重要です。

IIJは、自社におけるエネルギー使用量の低減、とりわけ、世界の全消費電力の2%を占めるといわれているデータセンターについて、省エネルギーの取り組みを積極的に推進しています。また、インターネットの特長である「人やモノの移動を減らす」サービスは、社会全体のエネルギー効率向上においても、大きな役割を果たせると考えています。

松江データセンターパークでの取り組み

松江DCP

IIJは、2011年に日本初の外気冷却方式モジュール型データセンター「松江データセンターパーク(以下、松江DCP)」を島根県松江市に開設しました。松江DCPでは、コンテナの中にIT機器と空調設備をモジュールとして一体化させる「コンテナ型モジュール構造」を採用し、構築期間の大幅な短縮や柔軟な構成の組み換えを実現しています。また、コンテナ型ITモジュール「IZmo(イズモ)」の活用により気温や湿度に応じた適切な運転モードが自動的に選択されることで、大きな省エネルギー効果を上げています。

また、データセンターにおける省エネルギーなどの環境改善活動を組織的・継続的に推進するため、2013年にISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得しています。

この他、環境省の脱炭素先行地域への申請にあたり、IIJはデータセンターを提供する民間事業者として松江市と共同提案を行い、松江市は2023年5月に脱炭素先行地域に選定されました。

ITモジュール「IZmo」

ITモジュール「IZmo」

一般的なデータセンターはIT機器から生じる熱を取り除くための空調システムに大きな電力を必要とします。松江DCPのITモジュール「IZmo」は、商用データセンターとしては初となる外気冷却方式を採用し、コンプレッサーや冷凍機の稼働を減らし、消費電力を大幅に削減しています。

また、従来のデータセンターではサーバの搬入や構築に大量の梱包材や養生材が必要でしたが、「IZmo」はあらかじめサーバを搭載したコンテナをデータセンターに運搬し、梱包材の削減だけでなく輸送時のCO2の削減にも寄与しました。

省エネルギーの実績

PUE(Power Usage Effectiveness)は、データセンターの電力使用効率を表す指標で、「データセンター全体の消費電力」を「IT機器による消費電力」で割って算出した数字が1.0に近いほど効率が良いとされています。日本国内では、従来型データセンターでは2.0、高効率設備が導入された新しいデータセンターで1.6程度と言われていますが、松江DCPにおいては1.3台を達成しています。

松江DCPの年間平均PUE実績

松江DCPの年間平均PUE実績

2013年に開発した「co-IZmo/I(コイズモアイ)」では、間接外気冷却方式を採用することでちりやほこりが多い、塩分濃度が高いといった空気質の悪い環境でも高い省エネルギー性が発揮できることから、幅広い地域での普及が期待されています。

co-IZmo/I

co-IZmo/I

白井データセンターキャンパスでの取り組み

5GやIoT、AIなどの普及で想定されるデジタルデータ増加に伴う大規模な需要に応えるため、松江DCPで得られた知見を活かし、2019年5月から千葉県白井市で「白井データセンターキャンパス(以下、白井DCC)」の運用を開始しました。本データセンターキャンパスではモジュール構造をより大きな単位で実現するシステムモジュール型工法を採用し、施工に至るまでの建築生産プロセスを体系化・省力化しています。

白井DCC

白井データセンターキャンパス

蓄電池導入による電力のピークカット・ピークシフト

白井DCCに設置された
大容量リチウムイオン蓄電池

大容量リチウムイオン蓄電池

白井DCCでは、非常時の電力供給源として設置しているリチウムイオン蓄電池を平常時も利用して、電力需要のピークカット・ピークシフトを推進しています。

2019年の導入時から、夏場の空調用電力の平準化に活用することを目的に検証を進め、電力のピークカットとピークシフトの実現に向けた本格検証を行った結果、年間ピーク期となる2020年8月において白井DCC全体の電力需要に対し、10.8%のピークカット効果を実測しています。

システムクラウド「IIJ GIO」における消費電力削減量の試算

IIJは2009年よりシステムクラウドサービス「IIJ GIO」を開始し、多くのお客様に利用されています。「IIJ GIO」は白井DCCおよび松江DCPをはじめとするエネルギー効率の高いデータセンターを基盤とし、大規模なサーバ・ストレージ機器によってITリソースの集約効率を高めることで、大幅な消費電力削減を実現してきました。

サービス基盤全体の年間消費電力量は約99,000MWh/年であり、これはすべてがオンプレミス環境にある場合と比較して、およそ40%の電力量(一般家庭の約15,000世帯分相当(※))の削減になっていると試算しています。 IIJは今後も「IIJ GIO」のエネルギー効率向上を追求し、社会のIT利用における消費電力削減に寄与することで、CO2排出削減に貢献していきます。

  • (※)環境省「令和3年度家庭部門のCO2排出実態統計調査」より1世帯あたり平均4,175kWh/年として計算

二国間クレジット制度:ラオス 省エネデータセンタープロジェクト

ラオス初の環境配慮型データセンター

ラオス初の環境配慮型データセンター

二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)は、世界の温室効果ガス(GHG)削減に貢献するため、優れた低炭素技術、製品、システム、サービス、インフラなどの途上国への普及や対策実施を促進し、これらの活動により実現した温室効果ガス(GHG)排出削減・吸収に対する日本の貢献を定量的に評価し、我が国の削減目標の達成に活用する制度です。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)がこの制度を活用し実施する、モジュール型データセンター構築・運用技術による温室効果ガス排出削減などの有効性の検証を目的とする実証事業を、IIJは豊田通商株式会社、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社と受託しました。本事業では、モジュール型データセンター「co-IZmo/I」をラオスのビエンチャンに設置し、同国の環境に適した運用とその温室効果ガス排出削減効果を実証するとともに、同国におけるIT分野での低炭素成長モデルの中核を担う、初の環境配慮型国営データセンター構築にも貢献しました。

そして、2019年1月にはJCMプロジェクトとしてクレジット発行(合計:207t)されました。2013年に同国との間でJCMを開始して以来、NEDOの実証事業としてラオス初のクレジット発行となります。

製品・サービスでの取り組み

リモートアクセスによる人・モノの移動の削減

テレワークやWeb・ビデオ会議に代表されるように、仕事の環境が急速にデジタルシフトする中、IIJグループは快適で生産性の高いデジタル空間「デジタルワークプレース」を企業に提供しています。

低遅延で安定した接続環境を提供し、電波が不安定な場所でも通信が途切れにくいVPNサービス「IIJフレックスモビリティサービス」などにより、生産性を高め、企業価値の向上に寄与しています。

また、インフラの提供を通じてデジタルワークプレースを推進し、人やモノの移動に伴う温室効果ガスの排出量を削減することで、気候変動の緩和に貢献していきます。

スマートメーター・Bルートの活用による電力需要の見える化

スマートメーターには、一般電気事業者が電気代の料金計算に用いる検針データが30分ごとに取得できる「Aルート」の他に、電力利用状況をほぼリアルタイムに取得できる「Bルート」が用意されています。IIJは、Bルートの利用に必要な認証機器やサービスの提供を行っています。

Bルートを通じて取得したライフログデータを活用することで、見守りシステムや省エネ診断などの新しいサービスが生まれる可能性があるほか、スマートグリッドの一翼を担う電力センサーとしても期待されています。

再生可能エネルギーの活用

気候変動の軽減に向けた温室効果ガスの排出削減のためには、省エネルギーだけでなくCO2の排出量が少ないエネルギー源を選択することも求められています。データセンターをはじめとして事業活動に大量の電力を消費するIIJは、この課題に対応する必要性を認識し、エネルギー転換への取り組みを進めています。

松江データセンターパークでの取り組み

松江DCPは2022年2月から、実質再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力(※1)をサイト1で導入し、2023年3月からは管理棟屋上および敷地内に設置した太陽光発電パネルの運用を開始いたしました。設置した太陽光発電パネルの設備容量は、松江DCPサーバ棟の約7%にあたり、年間の発電量は約340MWhを見込んでいます。現在ではサイト2でも再エネ由来電力の導入が完了しており、これらの取り組みの結果、松江DCPでは再エネ利用率100%を達成しています。

サイト1およびサイト2で導入した電力は、トラッキング付FIT非化石証書(※2)を活用しており、RE100(※3)に対応しています。

  1. (※1)電力会社の電源に環境価値証書を付加することで、実質的に再エネ100%かつCO2排出量ゼロとみなされる電力
  2. (※2)再生可能エネルギーや原子力といった非化石エネルギーによって発電された電源が持つ、非化石エネルギーとしての環境価値(CO2排出量の低減効果など)を証書にしたもので、2018年5月に開設された非化石価値取引市場を介して発行される
  3. (※3)RE100(Renewable Energy100%)は、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目指す国際的な枠組み

白井データセンターキャンパスでの取り組み

白井データセンターキャンパスに
設置した太陽光発電パネル

太陽光発電パネル

白井データセンターキャンパスは、オンサイトメガサイトソーラー発電設備の併設や、オフサイトの発電設備からの電力調達を進めています。また、2023年4月からは一般社団法人日本卸電力取引所の非化石価値取引会員に加入し、FIT非化石証書(※)の購入及び仲介ができようになったことで、希望するお客様に対して、FIT非化石証書を活用した再エネ由来電力の提供を行っており、今後も、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを推進します。

  • (※)非化石電力のうちFIT制度(固定価格買い取り制度)を通して買い取られた電気の環境価値を証書にしたもの

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