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まずは、ブロードバンド及びモバイル利用者の1日の利用量をいくつかの切口から見ていきます。ここでの1日の利用量は各利用者の1週間分のデータの1日平均です。
図-2及び図-3は、ブロードバンドとモバイル利用者の1日の平均利用量の分布(確率密度関数)を示します。アップロード(IN)とダウンロード(OUT)に分け、利用者のトラフィック量をX軸に、その出現確率をY軸に示していて、2014年と2015年を比較しています。X軸はログスケールで、10KB(104)から100GB(1011)の範囲を示しています。一部の利用者はグラフの範囲外にありますが、概ね100GB(1011)までの範囲に分布しています。
ブロードバンドのINとOUTの各分布は、片対数グラフ上で正規分布となる、対数正規分布に近い形をしています。これはリニアなグラフで見ると、左端近くにピークがあり右へなだらかに減少するいわゆるロングテールな分布です。OUTの分布はINの分布より右にずれていて、ダウンロード量がアップロード量より、ひと桁以上大きくなっています。2014年と2015年で比較すると、INとOUT共に分布の山が右に少し移動していて、利用者全体のトラフィック量が増えていることが分かります。OUTの分布を見ると、分布のピークはここ数年間で着実に右に移動していますが、右端のヘビーユーザの使用量はあまり増えていないので、分布の対称性が崩れてきています。一方で、INの分布は右側の裾が広がっています。以前は、ここによりはっきりした山がINとOUT両方にあり、IN/OUT量が対称なヘビーユーザを示していました。そこで便宜上、大多数のIN/OUT非対称な分布を「クライアント型利用者」、右側の小数のIN/OUT対称なヘビーユーザの分布を「ピア型利用者」と呼んできました。今回もその慣習に従います。ここ数年で、ピア型利用者の山は小さくなりほとんど識別できなくなりました。これは、ヘビーユーザの割合が減少していることを示しています。
図-3のモバイルの場合、ブロードバンドに比べて利用量は大幅に少ないことが分かります。また、使用量に制限があるため、分布右側のヘビーユーザの割合が少なく、左右非対称な形になります。極端なヘビーユーザも存在しません。外出時のみの利用や、使用量の制限のため、各利用者の日ごとの利用量のばらつきはブロードバンドより大きくなります。そのため、1週間分のデータから1日平均を求めると、1日単位でみた場合より利用者間のばらつきは小さくなります。1日単位で同様の分布を描くと、分布の山が少し低くなり、その分両側の裾が持ち上がりますが、基本的な分布の形や最頻出値はほとんど変わりません。
表-1は、ブロードバンド利用者の1日のトラフィック量の平均値と、分布の山の頂点にある最頻出値の推移を示します。今回分布の山に対して頂点が少しずれているので、最頻出値は分布の山の中央に来るように補正しています。分布の最頻出値を2014年と2015年で比較すると、INでは28MBから40MBに、OUTでは447MBから708MBに増えていて、各利用者のトラフィック量が、特にダウンロード側で増えていることが分かります。一方、平均値はグラフ右側のヘビーユーザの使用量に引っ張られるので、2015年には、INの平均は467MB、OUTの平均は1621MBと、最頻出値よりかなり大きな値になります。2014年には、それぞれ437MBと1287MBでした。モバイルでは、表-2に示すように、極端なヘビーユーザが少ないため、平均と最頻出値にはそれ程差がありません。最頻出値は、INで5.5MB、OUTで40MBで、平均値は、INで6.0MB、OUTで46.6MBです。
図-4及び図-5は、利用者ごとのIN/OUT使用量を5,000人をランダムに抽出してプロットしています。X軸はOUT(ダウンロード量)、Y軸はI N(アップロード量)で、共にログスケールです。利用者のIN/OUTが同量であれば対角線上にプロットされます。
対角線の下側に対角線に沿って広がるクラスタは、ダウンロード量がひと桁多いクライアント型の一般ユーザです。ブロードバンドでは、以前は右上の対角線上あたりを中心に薄く広がるピア型のヘビーユーザのクラスタがはっきり分かりましたが、今では識別ができなくなっています。便宜上、クライアント型とピア型に分けましたが、実際には、クライアント型の一般ユーザでもSkypeなどのピア型のアプリケーションを利用し、また一方のピア型のヘビーユーザもWebなどのダウンロード型のアプリケーションを利用しているので、その境界はあいまいです。つまり、多くの利用者は両タイプのアプリケーションを異なる割合で使用しています。また、各利用者の使用量やIN/OUT比率にも大きなばらつきがあり、多様な利用形態が存在することが窺えます。ここでは、2014年と比較しても、ほとんど違いは確認できません。
モバイルでも、OUTがひと桁多い傾向は同じですが、ブロードバンドに比べて利用量は少なく、IN/OUTのばらつきも小さくなっています。
図-6及び図-7は、利用者の1日のトラフィック量を相補累積度分布にしたものです。これは、使用量がX軸の値より多い利用者の、全体に対する割合をY軸に、ログ・ログスケールで示したもので、ヘビーユーザの分布を見るのに有効です。グラフの右側が直線的に下がっていて、ベキ分布に近いロングテールな分布であることが分かります。ヘビーユーザは統計的に分布していて、決して一部の特殊な利用者ではないと言えます。モバイルでも、ヘビーユーザはべき分布していますが、ヘビーユーザの割合が少なく、ヘビーユーザにおいてもOUTの利用量がINより数倍大きくなっています。
利用者間のトラフィック使用量の偏りをみると、使用量には大きな偏りがあり、結果として全体は一部利用者のトラフィックで占められています。例えば、ブロードバンド上位10%の利用者がOUTの65%、INの90%を占めています。更に、上位1%の利用者がOUTの29%、INの63%を占めています。ここ数年のヘビーユーザ割合の減少に伴い、僅かながら偏りは減ってきています。
モバイルでは、上位10%の利用者がOUTの49%、INの50%を、上位1%の利用者がOUTの13%、INの19%を占めています。ここからも、モバイル利用者のヘビーユーザ割合が少ないことが分かります。
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