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本稿ではソーシャル・ビッグデータとその性質を中心に議論してきました。Andreas Weigendが主張する「ソーシャルデータ革命」は、Eコマースといった特定の分野では、商品購入における人間行動に関する膨大なデータが蓄積され始めており、そのデータの分析を前提とした新たなアプローチの必要性が主張されています。
ソーシャル・ビッグデータが「人間の行動に関するデータ」であることから、その分析方法の開発は社会科学や行動科学の領域の研究となるのでしょう。しかしながら、人間の行動に関してこれだけ広範囲かつ詳細なデータを入手できるような状況がこれまでなかったことを考えると、価値ある知識を抽出できる有効な手法を見出すには相応の時間が必要でしょう。筆者が知る限りでは、マイクロブログやSNSなどから得たデータを元に個人の行動を追跡、分析するアプローチは「なんらかの分析結果は得られるものの、そこから有意な知見を見出すことが難しい」という意味においてあまり成功していないと考えます。
一方、インターネット利用者の行動をマクロな現象と捉え、複雑系の分析手法を応用するTobias Preisのアプローチの方がむしろ有意な知見が得られやすいのではないかと考えます。この分析にはクエリーデータやWikipedia PVCなどが用いられていますが、Preisの論文は、独立した個人による集団行動の予兆を捉えることにより、短期的な予測が可能であることを示しているように思います。また、この分析によって得られた変化の著しい現象をより詳細に分析するには、ソーシャルメディアから得られたデータを使って個人の行動を追跡することにより、要因などの知見を得ることができるのではないかと、考えています。
執筆者プロフィール
藤田 昭人(ふじた あきと)
株式会社IIJイノベーションインスティテュート(IIJ-II)企画開発センター チーフアーキテクト。2008年IIJ入社。
構造化オーバーレイ研究の知見を活用したクラウドコンピューティング技術の研究開発に従事している。
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