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IIJ.news Vol.169 April 2022
IIJ MVNO事業部 事業統括部シニアエンジニア
堂前 清隆
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。
データセンターというと、多数のコンピュータが搭載されたラックが整然と並んでいる様子を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。今回は、データセンターとそこに設置されるコンピュータ(サーバ)の変化を振り返ります。
実は、インターネットが普及し始めた1990年代前半、今のようにデータセンターに多くのサーバは置かれていませんでした。データセンターという名前も一般的ではなく、ネットワークセンターや通信局舎と呼ばれ、設置されている機器もおもに通信機器でした。お客さまの社屋から引き込まれた通信回線を接続するルータなどに混じって、サーバが置かれているといった具合です。今ではサーバを設置するためのラックのように見える「19インチラック」も、もともとは通信機器を設置するのが主目的でした。
この時代、インターネットで利用するような小型~中型のサーバは、19インチラックに固定できるものがあまり出回っておらず、卓上に置くUNIXワークステーションをベルトでくくりつけたり、パソコン用の汎用部品を組み込むラックマウント用のケースなどが使われていました。
2000年頃に登場した「1Uサーバ」がこの状況を変えました。1Uサーバは、サーバメーカがラックマウントを前提として部品から筐体まで設計したものです。これにより、ラックマウント機器の規格である1U(高さ約44.5ミリ)に一台のサーバが納められるようになり、従来に比べて3~4倍の密度でサーバを設置できるようになりました。
ただ、1Uサーバも良いことばかりではありませんでした。高さを1Uに抑えるためにCPUなどを冷却するファンのサイズが制限され、それが原因で激しい騒音が発生するなど、小型化にはデメリットもあったのです。
そんな困難がありながらも、さらなる高密度化が図られました。2002年頃に登場したブレードサーバは「刃(ブレード)」のような細長い板にサーバの主要部品を搭載し、このブレードを外枠になる「エンクロージャ」に多数取り付けることで密度を高めました。メーカによって規格は異なりますが、例えば3Uサイズでサーバ18台分のブレードを搭載するといった感じで、かなりの高密度が達成できました。
ただ、ブレードサーバは高密度化を進めすぎたのかもしれません。もともと通信機器が主体だったデータセンターに、大量の電力を消費するサーバを高密度に設置した結果、供給電力の限界を超え、さらには空調システムの限界も超えて冷却が追いつかなくなるという事態が発生したのです。結局、ブレードサーバは数年で廃れ、1Uやその倍の2Uサイズのサーバが業界標準として使われるようになりました。
その一方で、新しい試みもあります。先に書いたとおり、冷却の問題などで19インチ・1Uサイズというのは必ずしもサーバに適したサイズではありません。多くの通信機器が19インチラックに設置されていたため、それにサーバも合わせた結果でした。
クラウド時代が訪れ、データセンターに置かれる機器の主役がサーバになってくると、サーバに適した規格を新たに作ろうという動きが起りました。そうしたチャレンジの一つが、2011年にFacebookによって提唱され、その後150社以上が参加することになった「Open Compute Project(OCP)」です。OCPはサーバだけでなく、ラックについても新しいデザインガイドを提案しました。あくまでOCPは大規模なインフラのための規格なので、すべてのサーバがOCPに置き換わるわけではありませんが、データセンターのなかではこういう変化も起っているのです。
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