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IIJ.news Vol.173 December 2022
創業時から現在に至るまで、IIJサービスの根幹を担うネットワークとして、技術者が拡張・改善・運用を続けてきた「バックボーン」。
本稿では1990年代から現在までの主要なトピックをバックボーンマップとともに振り返る。
ITの世界で「バックボーンネットワーク」と言えば、大規模な通信ネットワークにおいて、拠点間、事業者間、国家間などを結ぶ大容量の通信回線網を指します。「Backbone(背骨)」という言葉の通り、バックボーンネットワークは通信の基幹を成します。その種類や規模は、ビルのフロア間を結ぶ構内ネットワークから、企業の拠点間を結ぶ広域通信網、ISP間を結ぶネットワーク網、大陸間を結ぶ海底ケーブル網などさまざまです。
1993年11月、東京~横浜間(192kbps)で、IIJのバックボーンは産声をあげました。
94年3月、IIJのネットワークは米国UUNetとつながり、国際的な到達性を獲得しました。その後、Windows95の普及やISPの接続料金の低下にともない、インターネットの利用者が急増しました。96年1月、アジア・インターネット・ホールディングス(AIH)のネットワーク「A-Bone」を介して、IIJのバックボーンはアジア諸国と接続しました。さらに、米国との回線増強や各国主要ISPとの相互接続など、接続先を増やしながら耐障害性・接続性・安定性・信頼性の向上を進めていきました。
2001年頃からブロードバンド時代が到来し、一般ユーザが安価で高速な常時接続サービスを利用できるようになりました。
マルチメディア技術の向上やコンピュータの進歩とともに、コンテンツ容量が大きくなり、トラフィック量は増加の一途をたどりました。一方、DDoS攻撃や迷惑メールなど、インターネットの安全・安心を脅かす行為が世界中で深刻化しました。急激なトラフィック量の増加や回線切断に対応すべく、IIJのバックボーンに携わる技術者は2000年代を通じて回線の増強や運用の工夫を独自に重ねました。また、インターネット全体のセキュリティ向上のために、関連組織や他の事業者とも連携しながら、さまざまな対策を講じました。
2011年3月に発生した東日本大震災前からIIJはバックボーンの経路冗長化を行なっていましたが、未曾有の災害に遭い、再度その構成を見直しました。
結果、日本国内のどこかでネットワークにトラブルが起きても、他のルートにトラフィックが迂回するようになり、通信が保たれる確率が高まりました。ネットワークが集中する東京圏・大阪圏で災害が起きても、それを迂回して他の拠点を経由するため、通信は保たれます。13年4月、IIJはロンドンにデータセンターを開設し、日・英・米を大容量回線でつなぐバックボーンを構築しました。欧州へのバックボーン拡張では、日英間を直接つなぐことにより伝送遅延を低減し、接続性が大幅に向上しました。これでIIJのバックボーンは「世界一周」を果たしました。
時代の変化に合わせて、バックボーンはより太く、堅牢なものになりました。
現在のバックボーンに使われている回線は100Gbpsが中心です。2022年、インターネットマルチフィード、NTTコミュニケーションズとともに「400ギガビットイーサネットを用いたIX相互接続実証実験」に成功しました。5G時代の本格化を前にIXの広帯域化が図られ、いっそう多様で快適なインターネット社会の到来が期待されます。目下、ウクライナ紛争にともないDDoS攻撃やシステム侵入などが発生し、さらには、インターネットの分断につながりかねない議論も報道されています。世界をつなぐインフラであるインターネットは、地球規模での有事の影響を受ける存在になったのです。
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