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2014年8月に行われた夏の甲子園におけるライブストリーミング配信では、ピークトラフィック108Gbpsを記録し、総リクエスト数は約19億となりました。
全配信サーバのログ解析の結果から明らかになったアクセス規模やデバイスタイプによるアクセス傾向の違いについて見ていきます。
朝日放送が取り組んでいる夏の甲子園のWeb展開において、IIJはライブストリーミング配信サービスを提供しています(※1)。朝日放送の特設Webサイトには例年大量のアクセスがあり、その多くがストリーミングのライブ配信を受信しています。2014年の夏の甲子園のストリーミング配信では、2014年8月25日の決勝戦においてピークトラフィック108Gbpsを記録しました。
2014年の夏の甲子園では、38台の配信サーバによるストリーミング配信が行われました(図-1)。甲子園球場で録画された映像は、朝日放送でエンコードされ、RTMP(Real Time Messaging Protocol)でIIJのインジェストサーバにアップロードされます。インジェストサーバでは、モバイル端末向けにHLS(HTTP Live Streaming)、PC向けにHDS(HTTP Dynamic Streaming)の2種類のコンテンツを生成しています。クライアントのフロントエンドとなるWebサーバではこれら2種類のコンテンツをキャッシュしており、各クライアントからのリクエストに応じて、Webサーバが要求されたコンテンツを返す仕組みになっています。
ライブストリーミング配信において、クライアント(PCの場合ブラウザ、モバイル端末の場合専用アプリケーション)は、プレイリストとセグメントファイルのダウンロードを繰り返しています。プレイリストにはその時点でダウンロード可能なセグメントファイルのリストが書かれており、もう一方のセグメントファイルには一定の時間に分割された動画が含まれています。長い動画ファイルの再生と違い、ユーザがストリーミングのライブ配信を視聴するためには、細切れの連続したセグメントファイルを次々に再生していく必要があるため、クライアントは随時更新されるプレイリストを参照しながら、セグメントファイルのダウンロードを繰り返して再生しているのです。
各配信サーバでは、各クライアントがプレイリストとセグメントファイルに対して繰り返すリクエストが、そのリクエスト時刻と共にアクセスログに記録されます。夏の甲子園のストリーミング配信には大量のアクセスが集中するため、そのアクセスログも行数で約19億行と膨大な量になります。このアクセスログには、ユーザによる実際のストリーミング受信の記録が大量に含まれているため、アクセスログを分析することで本番環境におけるユーザの視聴傾向や視聴品質の現状を把握できるようになります。このようにして得られた知見は、今後のストリーミング配信の品質向上に向けた取り組みに活用していきたいと考えています。
2014年の夏の甲子園のストリーミング配信のアクセス規模を表した数値を表-1に示します。ここで示した数値は、大会の全期間において、全Webサーバのアクセスログを対象として算出しています。総リクエスト数は先程紹介したアクセスログの行数と同じです。総送信コンテンツ量は、アクセスログに記録されているプレイリストとセグメントファイルの各コンテンツのファイルサイズを合計した値です。実際にコンテンツがWebサーバから送信されるときは、HTTP、TCP、IPなどの各プロトコルのヘッダーも送信されるため、実際にWebサーバから送信されたデータ量は総送信コンテンツ量よりも多くなります。
ユニークIPアドレス数は130万となりましたが、このうち約半分以上(55%)のIPアドレスは、モバイル端末からの利用であることが分かりました。朝日放送としてモバイル端末向けの甲子園中継は初の試みでしたが、実際には多くのユーザがモバイル端末を利用して、甲子園の中継を見ていたことが分かります。NATを介して複数のユーザがストリーミング配信を受信している場合、Webサーバでは同じIPアドレスからのアクセスに見えるため、このような場合はユニークIPアドレス数は1として数えています。
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