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今回モバイル端末向けの試合中継は初めての試みであったため、PCとモバイル端末からの視聴方法にどのような違いがあったのか見てみます。ここでは視聴時間帯と視聴の長さの2つの点から見ていきます。
PCとスマートフォンなどのモバイル端末とでは、デバイスによる利用方法の違いから、視聴時間帯が異なることが考えられます。簡単に思いつくところでは、通勤通学などの移動時間帯ではモバイル端末からの利用が増えることが予想されます。甲子園のストリーミング配信においても、このようなデバイスによる視聴時間帯の違いがあったのかを見てみます。
大会期間中、1日に行われる試合数や試合の開始時刻は日によって多少変わります。試合数や開始時刻が違うとユーザの視聴パターンも変わってくる可能性が高くなります。そこで、同じような時間帯に試合が行われていた日として、朝8時から試合が行われた8日間(8月13~14、16~18、20~22日)を対象として選びました。この8日間のうち、6日間は平日で、残り2日間は週末でした。
この期間のアクセスログを用いて、朝8時から夕方18時までの時間別に、デバイス別のリクエスト数を求めて、このリクエスト数から各時間のモバイル端末のアクセス比率を求めました。8日間にわたって求めたアクセス比率を同時間帯ごとに集計した結果を箱ひげ図として図-4に示します。図の青い線で囲まれた四角の上辺と下辺は、それぞれ分布の75%tileと25%tileを示しており、四角の中の赤線は分布の中央値を示しています。朝8時台の中央値は71.8%と、モバイル端末からのアクセスの多さを示しています。続く9時台でも中央値は50%と、モバイル端末からのアクセスが半数を占めています。10時以降の中央値は40%を下回り、30%前後を行き来している状態が続きます。
この結果から、夏の甲子園のストリーミング配信においても、通勤通学時間帯はモバイル端末からの視聴が多く、オフィスアワーの開始後にはPCからの視聴が増えるというように、ユーザの視聴方法がシフトする様子が窺えます。
PCとモバイル端末では視聴時間帯が異なるだけでなく、見ている時間の長さも異なることが考えられます。以前はモバイル端末の画面の小ささや、移動中のネットワーク帯域の細さなどの理由で、移動中にストリーミング配信を見続けることは難しい側面がありましたが、最近はタブレットだけでなくスマートフォンでも画面サイズの大きなものがあり、また、移動中のネットワーク環境もLTEやWiFiへのオフロードなど利用可能な帯域が増加しているので、モバイル端末からも長めの視聴を行える環境が整ってきていると考えられます。
PCとモバイル端末との視聴の長さを比較するためには、アクセスログから各ユーザの視聴を取り出して、その長さを比較する必要があります。しなしながら、アクセスログにはユーザ識別子や視聴の識別子が記録されていません。そこで、ここではPCとモバイル端末との視聴の長さの傾向を比較する方法として、代替的に連続するセグメントファイル数の長さで比較することにしました。
具体的には、クライアントIPアドレスとデバイスタイプごとに分類したアクセスログから、セグメントファイルへのリクエストのみを取り出した上で、このリクエスト群の中でセグメント番号が5つ以上連続している箇所を取り出し、その連続したセグメントファイル数を比較します。セグメント番号が5つ以上連続している箇所としたのは、セグメントファイル数があまりに短い箇所は視聴としてカウントするには適切ではないためです。今回はこのような方法を用いているため、このセグメントファイル数が各ユーザの視聴時間を示すものではないことをお断りしておきます。
図-5にPCとモバイル端末との連続セグメントファイル数の分布を累積度数分布で示します。PCとモバイル端末との連続セグメントファイル数を比較すると、平均でPCの方がモバイル端末よりも約2倍長くなります。また、中央値で比較するとPCの方がモバイル端末より2.5倍長くなります。この結果から、視聴の長さは、PCの方がモバイル端末よりも長い傾向にあることが分かります。また、再生プレイヤーによる視聴時間の測定において、PCからの視聴時間は20分程度、モバイル端末からの視聴時間は10分程度となっており、この結果からもPCからの視聴時間がモバイル端末より長くなっていることが分かります。
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