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IIJ.news Vol.166 October 2021
IIJ MVNO事業部 事業統括部シニアエンジニア
堂前 清隆
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。
インターネットに関連する技術のなかでも、スマートフォンで利用する携帯電話網以外に、無線LAN、Bluetooth、IoT 用の無線など「無線通信」を利用することが増えてきました。こうした無線通信は、市販の端末を購入すれば使うことができ、利用者自身が免許を受けて利用することはめったにありません。しかし無線通信の世界では、免許なく利用できるほうが例外であり、多くの無線通信では、無線局の免許と、 無線設備を操作する人、あるいはそれを監督する代表者が免許を受ける必要があります。無線局だけでなく、無線設備を操作する人にも免許を求めるのは、無線局が発する電波には空間を伝わり周囲に広がる性質があり、不適切な操作を行なった場合、他の無線通信を混信・妨害する恐れがある ためです。
運用に免許が必要な無線設備には、さまざまなものがあります。船舶や航空機の航行に欠かせない無線通信やタクシー無線などは一般的ですが、それ以外にも一部のドローンの映像伝送やテレビの無線中継車などでも免許が必要です。変わったところでは、自動車の速度違反の取り締まり用 無線レーダーの運用にも免許が必要です。
無線設備を操作する人は、電波に関する一定の知識や技術を身につけなければならず、これを満たして免許を受けた人を法律で「無線従事者」と呼びます。無線従事者になるには、法律で定められた試験に合格するか、規定の講習を受講する必要があります。
ところで、日本には無線従事者の資格が23種類もあり、それらは大きく、総合無線通信士、海上無線通信士、航空無線通信士、陸上無線技術士、アマチュア無線技士に分けられます。さらに各区分には、一級、二級といった階層が設けられ、使用する電波の強さや目的によっては上級の資格が必要になります。また「海・空・陸」には、特殊無線技士という操作範囲を限定した資格もあります。これは、多くの人が利用する小規模な無線設備を扱う免許を、比較的簡単な試験で取得できるようにするためです。
免許の区分に「海上」があるのは、もともと無線が大洋を航海する船舶の救難用として普及したことに由来しているそうです。船舶に事故などが発生した際、助けを求めるために無線を使います。救助を求める無線は国を超えて通信できる必要があるため、海上での運用に関する規定が定められました。これに対応して国内の制度が整えられ、その後、幾度かの変遷を経て今のかたちになりました。
「航空」区分も海上と同様に、国を跨いで航行する航空機が各国の関連機関と連絡を取ることを念頭に、国際的な資格として整備されました。海上無線通信士および航空無線通信士、それらの上位資格である総合無線通信士は、国連の下部機関である国際電気通信連合(ITU)の文書「無線通 信規則」に定められた資格に準拠しています。なお、国内のみを航行する船舶の乗組員を想定した下位資格はその限りではありません。
残る「陸上」区分は、おおむね日本国内に限定された資格として扱われています。第一級陸上無線技術士は、試験で問われる知識の範囲も、操作可能な無線設備の範囲も広く、放送設備の運用などでも必要になる資格です。日本の無線資格のなかでも最高クラスのものですが、ITU の「無線通 信規則」には準拠しておらず、国内限定で用いられる資格と言えます。
23種類の無線資格には、共通規格の免許証が発行されます。国際的な資格である総合無線通信士、海上無線通信士、航空無線通信士の免許には英文の説明が付記される一方、国内資格である陸上無線技術士にはそれがないといった違いがあります。
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