STORY 04
回線交換とパケット交換
パケット交換は世紀の大発明
遠く離れた人に情報を伝えることで、人類の発展を支えてきた「通信」。電気信号を使った通信ということでは、1876年にグラハム・ベルが電話を発明したところまで遡ります。
それからおよそ1世紀。新しい通信技術としてインターネットが世の中に知られるようになりました。しかし、昔の固定電話とインターネットは、誰かと誰かをつなぐという意味では一緒なのですが、根本にある通信方式は全く異なるものなのです。
例えば、電話をかけると、1本の回線を1つの通話が専有することになります。例え話をしていなかったとしても、回線が繋がっている間はずっと専有されている状態で、他の誰かが使うことはできません。なので、専有されている回線に電話をかけても「通話中」になってしまいます。この通信方法が「回線交換」というものです。
これに対して、「パケット交換」という通信方法が1960年代に提唱されました。これによって複数の通信を1つの回線で共用することが可能になり、通信の効率化が進みました。そして、これを最大限活用したのがインターネットという通信方法なのです。
パケットとは何か?
では、このパケット交換という通信方式にはどんな特徴があるのでしょうか。
まず、パケットとはデータを入れる容器だと思ってください。その容器に情報を詰め込んで、回線に流していきます。
パケットはサイズが決まっており、写真や動画のような大容量の情報は、細切れにして複数の容器に分けて送信します。
このようにデータを細切れにすることで、非常に短い間隔で複数の通信のデータを交互に送ることができるのがパケット交換の特徴。この方法であれば、あたかも同時に複数の通信ができているように見えるのです。また、回線を使うのはパケットを送信しているときだけなので、回線が空いていれば他のパケットを送ることができます。
例えば、皆さんがあるWebサイトを数分間閲覧しているとしましょう。閲覧時間は数分間であっても、パケットが流れているのは最初にWebサイトを読み込んだときだけ。閲覧している間は回線を使用していないので、他の人が別のパケットを送ることにも使えるのです。
ちなみに、スマートフォンのデータ通信も同じパケット交換です。回線交換は回線を専有することに対して料金を支払っていましたが、パケット交換であればパケットを送受信した分だけ支払うことになります。
よく「ギガが減る」という言い方をしますが、ギガとはデータ容量の単位であるギガバイト(GB)のことです。スマートフォンの契約ではひと月に使えるパケットの量がギガバイト単位で決められていることが一般的。「ギガが減る」とはデータ通信の容量を消費するということで、つまり、使えるパケットの量が減っていくということです。
プロバイダの役割とは?
とはいえ、1つの回線で同時に流せるパケットの量にも制限があります。一度にたくさんのパケットが送信されると、回線上でパケットの渋滞が発生することに。それによってデータの流れが遅れ、タイムラグが発生するのです。
また、ある程度の渋滞であれば遅延しつつも送信できるのですが、最悪の場合は、パケットが流れなくなって「破棄」されてしまい、状況がひどくなると通信エラーとなってしまいます。
パケット交換は世の中を変えたともいえる通信方法ですが、データの遅延や破棄が頻繁に起こるようになると困りますよね。パケットが渋滞したり破棄されたりしないように管理・制御することで、パケットがスムーズに流れるようにする必要があります。これを担うのがIIJをはじめとするプロバイダで、その役割は主に2つあります。
- (1)回線の整備
- みなさんの自宅から基地局までは専有になっていますが、そこから先は共有の回線。共有することで効率がよくなり、コスト低下にもつながります。世界中のプロバイダが、その回線を整備し新たに作ることで、増加するユーザー数にも対応し、世界のインターネット環境をより快適なものにしているのです。
- (2)ルーティング
- データを送信するルートを適切に案内することです。
- 世界中には、インターネットの回線がくまなく張り巡らされています。例えば、日本からアメリカへデータを送ろうとする場合、そのルートは無限に考えられますが、遠回りをせずに効率的に送れるルートを示してあげるのがルーティングです。
パケット交換は効率的な通信方法ですが、集めたパケットをスムーズに流すことができないと、パケット交換のデメリットが際立ってしまいます。その管理が重要で、みなさんが見ている動画がストレスなく見られるのも、IIJをはじめとするプロバイダの回線管理によって成り立っているのです。
- サービス基盤本部ネットワーク技術ネットワーク技術課
渡邉 一平(わたなべ いっぺい)
- 高品質で快適なインターネット接続環境を実現するためバックボーンの設計や運用をしています。最近は安全、安心な接続環境の実現に興味を持っています。