STORY 09
インターネット回線を脅かす物理的な脅威
【インターネット用設備間の接続】
日々、世界中でインターネットを介して情報のやり取りがされていますが、それらのデータは、実際にどのような施設を通って運ばれているか、ご存知ですか?
インターネットの回線は、専用の通信会社のビルを幾度も中継しながら、情報の発信元と受信先をつないでいます。
利用者にとって、今やインターネットは無線接続が当たり前になってきましたが、全ての中継施設同士でも無線が飛び交っているわけではありません。実は、昔も今も、専用施設間では、
- ・陸続きの場合:地中に埋めたケーブルや、電信柱同士を結んだケーブル
- ・海を挟む場合:海底ケーブル
などの「有線」を伝って、データの受け渡しが行われています。
無線に比べ有線は、高速でデータが運べる/回線が安定する/大容量のデータが運べる/安価である など、さまざまな理由があるからです。
【物理設備の故障】
物理的に存在する設備ですから、もちろんハード故障はつきものです。ハイテクに思えるインターネットの世界ですが、その設備の故障原因は割とシンプルかつ原始的だったりします。では、いくつかの例をご紹介していきましょう。
- 自然現象によるもの
例えば、地震による大きな津波が発生した場合、海流にもまれて海底ケーブルが切断されることがあります。そのような海底トラブルに対処するために、海底ケーブルを積んだ船が世界中で航海を繰り返し、ケーブルの敷設や修理が行なわれています。
また、陸地でも地盤沈下や土砂崩れなどで、地中ケーブルが破損する場合もあります。
- 生き物(含む人間)によるもの
海底ケーブルはたまにサメに噛まれます。また、底引き網や船の錨(いかり)がケーブルを引っかけてしまい、切断されてしまうこともあります。
では、電信柱を伝うケーブルは安全でしょうか? いいえ、こちらにも天敵がいます。実はクマゼミがケーブルを枯れ木と勘違いし、産卵管を刺してケーブルの心線を傷つけてしまうのです。そのため主な生息地である西日本では、産卵されにくい構造のケーブルが開発されてきました。しかし、気候の変化により、近年では、東日本でもクマゼミの生息が確認され、同様の対応が必要になってきています。
- 部品の経年劣化によるもの
特段トラブルが起きなくても、ケーブルは自然に劣化していきます。さらに、通信会社側の設備、例えばルータやサーバ、監視機器など、さまざまな関連部品ももちろん経年劣化とともに故障が発生します。
【故障を想定した環境づくり】
このようにインターネットは、「どこかが壊れるのは当たり前」であり、あらかじめ、それらを想定した構築・運用設計がなされています。その特徴は大きく2つ。多重構成と監視体制にあります。
- 多重設計
データが通る経路は複数回線用意されています。Aという経路で何かしらのトラブルが発生した場合、すぐさまBやCという新たな経路へデータが流されます。また、同じ施設内でも、ある機材にトラブルがあれば、予備の機材がこれを補うなど、バックアップ体制が組まれています。
- 監視体制
インターネットは、回線が正常に稼動できているか、遠隔地から監視できるシステムが組まれています。一昔前、いわゆるインターネット黎明期では監視要員が目視で行っていた部分もありますが、現在はかなり自動化されていて、トラブルに対して迂回をかけるよう設計がされています。
【IIJの機器監視体制】
IIJではかなり早い段階、1990年代から、この自動監視システムの必要性を認識し、開発を行ってきました。そもそも当時は、各機器がどのようなトラブルを起こすのか、どの部分を監視すれば問題が検知できるのかさえ、ノウハウがなかった時代です。
そのため、一から設計し実験・開発を繰り返す中で、安定稼動に必要な監視システムを構築していきました。そうした長年の知見の蓄積が、現在のインターネット回線の安定稼動に役立てられています。