STORY 02
テレビ放送とネット動画の違い
視聴時間とデバイスを限定しない「ネット動画」とはどのような仕組みになっているのでしょうか。
「テレビは見てないけどネットで動画は見る」そういう話はもう普通になってきました。わざわざテレビの前に行かなくても、好きなタイミングでスマホから動画を見るほうが便利という意見も頷けます。それに、ネットの方が自分好みの番組が見つけやすいという声もあるでしょう。
ただし、スマホやその基地局が直接サーバにつながっているわけではありません。スマホがつながっている「携帯電話ネットワーク」といろいろな「サーバ」をつなげるために「インターネット」が使われているのです。
そういうこともあってか、現在のインターネットでは、ネットワークを流れるデータの7割以上が動画のデータだと推定されています。動画はもはや「インターネットの主役」と言ってもいいかもしれません。
テレビ放送も、ネット動画も、見た目は同じようなものに見えます。ところが、テレビとネットでは、そこに表示される番組を皆さんに届けるまでの方法が大きく異なっているのです。
テレビ放送とネット動画の違い
テレビ放送では、番組は各地に建てられた放送用のアンテナから電波によって送信されます。ここで重要なのは、あるチャンネルについて送信される電波は一種類と言うことです。テレビ放送では、放送局が送信した一種類の電波を視聴者全員が受信する「一対多」の関係となっています。
一方ネット動画では、動画のデータはインターネットにつながったサーバから送られてきます。そして、この仕組みはテレビと違って「一対一」の関係です。ネットで同じ動画をたくさんの人が見ていた場合でも、この仕組みは同様です。一万人の人が見ている場合は「一対一」の関係が一万人分ということになります。
大勢へ大容量データを届けるネット動画環境
テレビ放送のような「一対多」の関係の場合、視聴者が何十万人になっても送信側である放送局の負担は増えません。それに対して「一対一」の関係のネット動画は、視聴者が増えるとそれだけ送信側の負担が増えます。具体的には、視聴者の数に合わせてサーバをたくさん用意する必要があるのです。
だた、サーバさえたくさん並べておけばいいというものではありません。例えば生中継の番組を配信する場合、元になっている映像データは一つしかありません。これをたくさんのサーバにコピーするための仕組みが必要になります。コピーに時間がかかると動画が遅れたり途切れたりするので、素早く行わなければなりません、これはちょっとしたテクニックが必要になります。さらに、たくさんのサーバがデータを一度に送信すると、通信回線の混雑も発生してしまいます。混雑が発生しないようにするためには、単に通信回線のキャパシティを大きくするだけではなくて、インターネットの構造を把握した上で、ボトルネックができないように、回線を用意したりサーバを配置する必要があります 。
こうしてみると、ネット動画はテレビ放送と比べていろいろ不便なことばかりに思えます。ですが、ネット動画が「一対一」の仕組みであると言うことがメリットにもなるのです。それは、一人一人が自分の好みに合わせて好きな動画を視聴できると言うことです。
テレビ放送の場合、「チャンネル」という仕組みで複数の番組を流すことはできますが、放送に使えるチャンネルの数は限られているため、一人一人が好きな動画を見るようなことはできません。テレビは大勢の人が同じ番組を見るのに向いていて、ネット動画は一人一人が自分の好きな動画を見るのに向いているという違いがあります。
最近は個人だけでなく、企業がネット動画を使うことが増えてきました。また、テレビ局も一部の番組をネット動画として配信するようなことも始まっています。ネット動画はこれからもどんどん普及していくでしょう。
そんな中で、動画の配信をスムーズに行うためのCDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)という仕組みが普及しています。CDNは、先ほど紹介したような大量のサーバと、それにデータをコピーする仕組み、そしてボトルネックなくデータの流すための通信回線がセットになった、特別な仕組みです。実は、私たちIIJも大規模なCDNを持っています。そして様々な会社にCDNを貸し出しています。もしかすると、気がつかないうちにあなたもIIJのCDNから配信された動画を見ているかもしれません。
- JOCDN株式会社
岡 淳一(おか じゅんいち)
- IIJメディアコミュニケーションズに新卒入社。 以来、流れもの中心のエンジニア。現在はIIJ 配信事業推進部配信技術課所属およびJOCDN(株)技術部兼務。
- JOCDN株式会社
柄沢 憲(からさわ あきら)
- IIJ新卒採用第1号組で唯一現在も在職している営業。 現在はJOCDN(株)にて営業、経理、総務を担当。