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企業ユーザのクラウド利用は年々増加しています。総務省の平成26年度版通信白書によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は、平成25年末には33.1%となり、24年末の28.2%からおよそ5%増加しています。これは約3分の1の企業が何らかのクラウドサービスを利用しており、クラウドもいよいよ普及期に入ったことを示しています。
一方、同白書によるとクラウドサービスを利用していない企業のうち37.4%がセキュリティ面の不安を理由に挙げています。8月に起こった大勢の有名芸能人のプライベート写真が流出した事件では、ユーザがスマートフォンで撮影し、クラウドに自動転送されて保管された写真が、そのユーザのクラウドアカウントへの不正ログインを通じて流出しました。何らかのシステムの脆弱性を突かれたものではなく、不正ログインによるものですので、これは流出被害を受けた人の自己責任ということになります。同白書によると日本のスマートフォンの保有率は53.5%に至っており、これを業務に活用する機会も増えると考えられますが、上記の例のような機密情報の流出を防ぐためには、ユーザ一人一人が、自分が扱うデータのセキュリティ確保に必要な最新知識を持ち、自ら安全を確保するための適切な対策を取ることがますます重要になるでしょう。
本レポートは、このような状況の中で、IIJがインターネットというインフラを支え、お客様に安心・安全に利用し続けていただくために継続的に取り組んでいる様々な調査・解析の結果や、技術開発の成果、ならびに、重要な技術情報を定期的にとりまとめ、ご提供するものです。
「インフラストラクチャセキュリティ」の章では、2014年7月から9月までの3ヵ月間に発生した主なインシデントを時系列に並べ、分類し、月ごとに概要をまとめると共に、期間全体での統計と解析結果をご報告します。また、対象期間中のフォーカスリサーチとして、9月に公開された"ShellShock"と呼ばれるBashの脆弱性と、10月に公開された"POODLE attack"と呼ばれるSSLv3に対する新たな攻撃手法、及び、リスト型攻撃と呼ばれるアカウントハッキング手法について、それぞれの概要と対策について解説します。
「コンテンツ配信」の章では、近年増加の一途を辿り、2018年には全世界のコンシューマトラフィックの約80 〜90%になると予測されているビデオストリーミングの最新の状況について説明します。特に、4Kのような超高画質画像のビデオストリーミングを可能とするCODEC規格H.265と、インターネット上での安定かつ効率的な配信を実現するMPEG-DASHの特徴を解説します。またIIJが今年実施した、夏の甲子園のライブ配信の実例を紹介します。
「クラウドコンピューティングテクノロジー」の章では、ネットワークを仮想化し、ソフトウェアにより制御可能とするためのSDNの概念とOpenFlowプロトコルについての基本をおさらいし、総務省のSDN普及に向けた戦略的研究開発プロジェクト「O3」の成果として今年オープンソース化された、OpenFlow対応ソフトウェアスイッチ「Lagopus」を紹介します。特に、従来のソフトウェアスイッチと比較して飛躍的な性能向上を実現し、10GbEワイヤーレートでのパケット転送を達成した実装技術について解説します。
IIJでは、このような活動を通じて、インターネットの安定性を維持しながらも、日々改善し発展させて行く努力を続けております。今後も、お客様の企業活動のインフラとして最大限に活用していただくべく、様々なソリューションを提供し続けて参ります。
執筆者プロフィール
浅羽 登志也(あさば としや)
株式会社IIJイノベーションインスティテュート 代表取締役社長。株式会社ストラトスフィア 代表取締役社長。
1992年、IIJの設立と共に入社し、バックボーンの構築、経路制御、国内外ISPとの相互接続などに従事。1999年より取締役、2004年より取締役副社長として技術開発部門を統括。2008年6月に株式会社IIJイノベーションインスティテュートを設立、同代表取締役社長に就任。2012年4月に株式会社ストラトスフィアを設立、同代表取締役社長に就任。
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