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IIJ.news Vol.180 February 2024
IIJの100%子会社で、IT運用アウトソーシング事業を行なうIIJエンジニアリングは、衛星ブロードバンド通信サービスのオフィスビルなどへの導入をサポートする「衛星ブロードバンド導入支援ソリューション」の提供を開始した。
本稿ではソリューション提供に至る第一歩として、当社ビルの屋上にStarlinkを設置した経緯をレポートする。
IIJ エンジニアリング事業開発部長
米田 雅貴
国内携帯キャリア網の人口カバー率は諸外国と比べて高く、利用できない場所を探すほうがむずかしいくらいですが、想定以上に人が集まった場合などは十分に速度が出ないこともあり、映像ソースのアップロード手段として衛星ブロードバンドには以前から注目していました。そこで、Starlinkが国内で購入できるようになったタイミングで早々に購入しました。
Starlinkを利用するためには、おもに北側の空が十分に開けている必要があるのですが、都内は高層ビルが多いため、会社前の広場だと隣のビルが障害物となり、十分に性能が発揮できませんでした。
そこで、近隣ビルの影響を受けない当社ビルの屋上でテストしてみることにしました。想像通り屋上の視界は良好で、Starlinkをテストする場所としては最適であったのですが……
といった理由により、Starlinkを屋上に常設して、オフィスフロアで日常的に使えないかと考えるようになりました。
ビル管理会社には、Starlinkのサービスの概要や常設することのメリットなどを丁寧に説明しましたが、初めて許可を出すアンテナということもあり、管理会社内で設置の許可が下りるまでに何度かやり取りして、時間もかかりました。
ようやく設置の許可が下り、アンテナの設置方法について詳細を詰める段階になりました。
アンテナの設置場所は、パラボラアンテナ用の土台を利用していいとのことだったので、すぐに決まりました。
次に、オフィスフロアまでの配線です。幸いにも配管を利用できたのですが、経路を確認したところ、総距離が机上計算で約60mになることが判明しました。
Starlinkのアンテナに接続するケーブルはコネクタの形状が独自仕様のPoEケーブルで、付属している標準ケーブルだと約15mです。オプションの長尺ケーブルでも50m弱しかないため、届かないことになります。
ビル管理会社と再度協議した結果、EPS内に木盤と電源ユニットを設置させてもらうことになり、この問題は解決できました。
設計が決まった段階で、ビル管理会社へ以下の書類を提出しました。
アンテナ設置当日はとても暑い日でしたが、想定より短時間で開通できました。
設置後はオフィスフロアや来客用会議室でとても快適に衛星ブロードバンドを利用できています。
テスト中にそのままTeams会議に参加してしまったこともありますが、違和感なく利用できました。別フロアでサポートセンターを運用しているメンバーからは、広域災害時のバックアップ回線として使えるようにしておきたいという意見も寄せられています。
当社ビルの屋上にStarlinkを常設したいと思ってから実現するまでに約半年の時間を要し、調整事項も多く大変でした。また、フレッツなどのブロードバンドと違い、工事方法が確立されておらず相談する先もなかったこともあり、自分たちで試行錯誤した事項もありました。
皆さまがビル屋上に設置したいと思った際、今回の知見を共有して設置のお役に立てないだろうかと考え、先日プレスリリース*を出しました。さらに詳しいことなどご興味があれば、気軽にお問い合わせください。
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