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まずは、ブロードバンド及びモバイル利用者の1日の利用量をいくつかの切口から見ていきます。ここでの1日の利用量は各利用者の1週間分のデータの1日平均です。図-2及び図-3は、ブロードバンドとモバイル利用者の1日の平均利用量の分布(確率密度関数)を示します。アップロード(IN)とダウンロード(OUT)に分け、利用者のトラフィック量をX軸に、その出現確率をY軸に示していて、2015年と2016年を比較しています。X軸はログスケールで、10KB(104)から100GB(1011)の範囲を示しています。一部の利用者はグラフの範囲外にありますが、概ね100GB(1011)までの範囲に分布しています。
ブロードバンドのINとOUTの各分布は、片対数グラフ上で正規分布となる、対数正規分布に近い形をしています。これはリニアなグラフで見ると、左端近くにピークがあり右へなだらかに減少するいわゆるロングテールな分布です。OUTの分布はINの分布より右にずれていて、ダウンロード量がアップロード量より、ひと桁以上大きくなっています。2015年と2016年で比較すると、INとOUT共に分布の山が右に少し移動していて、利用者全体のトラフィック量が増えていることが分かります。右側のOUTの分布を見ると、分布のピークはここ数年間で着実に右に移動していますが、右端のヘビーユーザの使用量はあまり増えていないので、分布の対称性が崩れてきています。一方で、左側のINの分布は左右対称で、より対数正規分布に近い形です。
図-3のモバイルの場合、ブロードバンドに比べて利用量は大幅に少ないことが分かります。また、使用量に制限があるため、分布右側のヘビーユーザの割合が少なく、左右非対称な形になります。極端なヘビーユーザも存在しません。外出時のみの利用や、使用量の制限のため、各利用者の日ごとの利用量のばらつきはブロードバンドより大きくなります。そのため、1週間分のデータから1日平均を求めると、1日単位でみた場合より利用者間のばらつきは小さくなります。1日単位で同様の分布を描くと、分布の山が少し低くなり、その分両側の裾が持ち上がりますが、基本的な分布の形や最頻出値はほとんど変わりません。
表-1は、ブロードバンド利用者の1日のトラフィック量の平均値と中間値、分布の山の頂点にある最頻出値の推移を示します。分布の山に対して頂点が少しずれているので、最頻出値は分布の山の中央に来るように補正しています。分布の最頻出値を2015年と2016年で比較すると、INでは40MBから56MBに、OUTでは708MBから1000MBに増えていて、伸び率で見ると、INとOUT共に1.4倍になっています。一方、平均値はグラフ右側のヘビーユーザの使用量に引っ張られるので、2016年には、INの平均は475MB、OUTの平均は2081MBと、最頻出値よりかなり大きな値になります。2015年には、それぞれ467MBと1621MBでした。
モバイルでは、表-2に示すように、ヘビーユーザが少ないため、平均と最頻出値がほぼ一致します。2016年の最頻出値は、INで7MB、OUTで63MBで、平均値は、INで7.8MB、OUTで63.0MBです。最頻出値の伸び率は、INで1.3倍、OUTで1.6倍となっています。図-4及び図-5は、利用者ごとのIN/OUT使用量を5,000人をランダムに抽出してプロットしています。X軸はOUT(ダウンロード量)、Y軸はIN(アップロード量)で、共にログスケールです。利用者のIN/OUTが同量であれば対角線上にプロットされます。対角線の下側に対角線に沿って広がるクラスタは、ダウンロード量がひと桁多い一般的なユーザです。ブロードバンドでは、以前は右上の対角線上あたりを中心に薄く広がるヘビーユーザのクラスタがはっきり分かりましたが、今では識別ができなくなっています。また、各利用者の使用量やIN/OUT比率にも大きなばらつきがあり、多様な利用形態が存在することが窺えます。ここでは、2015年と比較しても、ほとんど違いは確認できません。
モバイルでも、OUTがひと桁多い傾向は同じですが、ブロードバンドに比べて利用量は少なく、IN/OUTのばらつきも小さくなっています。また、クラスタの傾きは対角線より小さくなっていて、使用量の多いユーザ程ダウンロード比率が高くなっていることが分かります。図-6及び図-7は、利用者の1日のトラフィック量を相補累積度分布にしたものです。これは、使用量がX軸の値より多い利用者の、全体に対する割合をY軸に、ログ・ログスケールで示したもので、ヘビーユーザの分布を見るのに有効です。グラフの右側が直線的に下がっていて、ベキ分布に近いロングテールな分布であることが分かります。ヘビーユーザは統計的に分布していて、決して一部の特殊な利用者ではないと言えます。
モバイルでも、ヘビーユーザはべき分布していますが、その割合が少なくなっています。昨年は分布の右端においてもOUTの利用量がINより数倍大きくなっていましたが、今年は分布のテイル部分でINとOUTが逆転していて、大量のアップロードを行うユーザが存在します。利用者間のトラフィック使用量の偏りをみると、使用量には大きな偏りがあり、結果として全体は一部利用者のトラフィックで占められています。例えば、ブロードバンド上位10%の利用者がOUTの60%、INの87%を占めています。更に、上位1%の利用者がOUTの26%、INの60%を占めています。ここ数年のヘビーユーザ割合の減少に伴い、僅かながら偏りは減ってきています。モバイルでは、上位10%の利用者がOUTの48%、INの50%を、上位1%の利用者がOUTの12%、INの21%を占めています。ここからも、モバイル利用者のヘビーユーザ割合が少ないことが分かります。
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