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最近はDDoS攻撃、サイバーセキュリティー、CSIRT、SOCといった言葉がニュースなどで使われるようになり、社会インフラとしてのインターネット上で起こる様々な事象や事件、事故がより身近になったことを実感しています。こういう背景を理解してITを使いこなすことが重要だということが一般的になってきたことは嬉しい反面、通信事業者としてその責任の大きさを改めて実感しているところです。本レポートは、このような状況の中でサービスプロバイダとしてのIIJが、インターネットやクラウドの基盤を支え、お客様に安心・安全に利用し続けていただくために継続的に取り組んでいる様々な調査・解析の結果や、技術開発の成果、ならびに、重要な技術情報を定期的にとりまとめ、ご提供するものです。
1章は、4月から6月までのインシデントの分析と傾向です。日本では年度の変わり目が4月ですが、その間隙を衝いた攻撃や昨年から続くHactivistらによる攻撃はいっこうに収束せず、むしろ定常化していると言える状態になった感があります。そんな中、5月の伊勢志摩サミットに関連する国際会議の期間中は官民挙げて対策に取り組んだ結果もあってか、会合の運営に影響を与えるような事件などは発生しませんでした。フォーカスリサーチでは、Volatility Frameworkを取り上げ、フォレンジック時のメモリイメージの解析手法について説明しています。また、マルウェアに感染しないためのWindowsクライアント要塞化も是非ご覧ください。
2章では、ブロードバンドトラフィックの昨年対比の伸びを分析しています。ブロードバンドトラフィックは昨年の伸び率を上回っており、また、モバイルトラフィックもこの1年での伸びは鈍化したものの依然として2倍以上の伸びを維持しています。この傾向は今後も変わらないであろうと推測されます。ブロードバンドとモバイルトラフィックは今後も継続して傾向を分析し、将来のトラフィックパターンの変化に対応できるようにしなければなりません。
3章では、技術トレンドとしてソフトウェア駆動によるコンテナ型データセンターを取り上げました。これまでのデータセンターは、ITリソースと設備リソースが別々に制御され動作していたのですが、これらを抽象化しソフトウェアによる制御機能を実現することにより、ITリソースの稼働状況に伴う負荷の変動に連動して、効率良く電力を使うことができる機能を実現することができました。本研究の主体はファシリティ部分の制御ソフトウェアの開発から始まり、ITリソースの制御まで統合した部分へと発展してきています。新しいインターネットインフラの在り方を提唱する開発成果となっています。
インターネットプロトコルによるコンピュータ同士が相互接続されただけのネットワークだった時代から、様々なコンピュータが連動し、人と人との繋がりを含む知能の集合体と化した今のインターネット。セキュリティもさることながらこうした社会インフラとなったインターネットの将来の使われ方を間違わないようにするためにも、常に現状をレビューしながら次の世代に向けて語り続けることがマネジメントの責任なのかもしれません。
IIJでは、このような活動を通じて、インターネットの安定性を維持しながらも、日々改善し発展させていく努力を続けております。今後も、お客様の企業活動のインフラとして最大限に活用していただけるよう、様々なサービス及びソリューションを提供し続けて参ります。
執筆者プロフィール
山井 美和(やまい よしかず)
IIJ 常務執行役員 サービス基盤本部長。
1999年6月IIJに入社と同時に株式会社クロスウェイブコミュニケーションズへ出向し、WDM・SONET網構築、広域LANサービスの企画、データセンター建設に従事し、2004年6月に帰任。帰任後は、IIJのサービス運用部門を担当。2016年4月からはインフラ運用部門を加え、IIJの法人ITサービス全般の運用を統括。同時にIIJのデータセンター事業を統括し、国内初の外気冷却を用いたコンテナ型の「松江データセンターパーク」の立ち上げを主導している。
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