IIJ.news vol.164 June 2021
ホスティングサービスをはじめ、電子契約サービス「GMO電子印鑑Agree」や、電子証明書認証局「グローバルサイン」などのインターネットサービスを提供するGMOグローバルサイン・ホールディングスは、コロナ禍を機に全社でリモートワーク化を決定。
それにともないVPNの刷新が急務となり、従来のVPN機器のリプレースを検討していたところ、「切れないVPNサービス」を謳った「IIJフレックスモビリティサービス」と出合い、方向転換を決断した。
近藤 明浩 氏
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
コーポレート部 情報システムセクション
システムソリューショングループ チーフ
[導入前の課題]
VPNのライセンスが足りず、セッションも切れやすかった
――以前からリモートワークを推進されていたそうですが、VPN環境で課題は感じていましたか?
近藤:
コロナ禍以前から、社内のエンジニアにリモートワークを推奨してきました。そのためにオンプレミスでVPN装置を導入・運用して、リモートアクセスに対応できる環境を用意していました。リモートワークを推奨しているといっても週に2日程度だったので、当時の契約ライセンス数は200で問題なく利用できていました。
ただ、既存のVPN装置はサポートの関係で、すでにライセンスの追加購入ができない状況でした。また、エンジニアからは、VPNを経由してサーバなどに接続している途中で切れてしまうことが多く、いちいち再接続しなければならないことへの苦情があがっていました。セッションが切れると、それまでの作業が無駄になることもあるため、数年にわたり課題となっていました。
そうしたなかコロナ禍が起こり、東京本社と大阪オフィスの全従業員240名ほどがリモートワークすることになり、既存のVPN装置ではライセンス数が不足するだけでなく、性能的にも限界があることから、リプレースを急ぐことになりました。
――そこで、IIJの切れないVPNサービス「IIJフレックスモビリティサービス」に興味を持たれたのですね。
近藤:
そうではないのです。実は、オンプレミスのVPN装置をリプレースする話が進んでいました。セッション切断の課題については解決策が見つかっていませんでしたが、ライセンス数と性能の問題をクリアーするためにVPN装置のリプレースで対応する予定で、見積もりもとって社内の決裁を通す直前まで進んでいました。
そんな時にIIJの担当者から「全社リモートワークにするというニュースを見ましたが、システムは大丈夫そうですか?」と連絡があったのです。もう決裁直前でしたから、対応はむずかしいことを伝えたうえで、話だけ聞くことになりました。
[選定の決め手]
課題解決策は「切れないVPNサービス」
――セッションの切れやすさやスループットの課題を解決できる同サービスの話を聞いて、どのように感じましたか?
近藤:
まず「セッションが切れない、切れにくい」――これは弊社の課題解決策になると響きました。業務がリモートワークになると、VPN接続のセッションが切れるたびに業務遂行にストレスがかかることが想定されます。これをクリアーできるのは大きなポイントでした。
またこれまでは、ビデオ会議やストレージサービスなど大容量の通信をクラウドサービスとのあいだでやり取りすることが増えると、VPNのスループットが枯渇する心配がありました。IIJのサービスには、特定のトラフィックをVPN経由にせず、直接インターネットに流す「スプリットトンネル」の機能が備わっているので、テレビ会議などの通信は、スプリットトンネルでインターネットに逃がすことで対処できると考えました。
話が進んでいたオンプレミスのVPN装置のリプレースでは、ライセンス数の問題は解決できても、セッションの切れやすさやスループットの課題には対応できません。コロナ禍による全社リモートワークへの移行も考えると、これらの課題を解決できるIIJサービスの導入に大きなメリットを感じ、上司に相談したところ、理解してもらえました。
――サービス導入に際して、何か問題はありましたか?
近藤:
実は、オンプレミスのVPN装置のリプレースよりもコストがかかることが最大の問題でした。それだけに上司に提案はしてみたものの、半分はダメだろうと諦めていました。ところが、同サービスの利用で得られるメリットを理解してもらえ、予想外に話が進んでいきました。
機能面では、デモを見て実際にインターネット通信を切断してから再接続したような状況でもセッションが切れないことを確認しました。そのうえ、1990年代からインターネット業界を牽引してきたIIJの社内でも実際に利用しているサービスということで、信頼感があったのも決め手の一つでした。
――コストについてはどう考えましたか?
近藤:
やはりコストアップは最小限に抑えたいので、無理のない範囲で料金の圧縮を図りました。ただ、オンプレミスのVPN装置だと自社運用になりますので、情報システム部門の負担は継続します。これをサービスに移行すれば、運用はIIJに任せることができます。そうした運用面でのメリットを加味し、機能面のメリットとあわせると、コストアップ分を吸収できると考えました。
[導入後の効果]
コロナ対策の全社リモートワークに対応。エンジニアからも高評価
――サービスの導入までに苦労はありましたか?
近藤:
2020年2月頃、IIJの担当者から話をもらい、本格的に検討を始めたのが3月末で、4月に正式発注しました。大型連休を挟んで回線の手配に1カ月半ほどかかり、本稼働が始まったのは6月末でした。導入期間も、運用開始後も、トラブルらしいトラブルはなく、スムーズな切り替えができたと感じています。個人的には、ちょうど社名変更の時期と重なり、作業がダブルパンチになったのでキツかったのですが、移行がスムーズで助かりました。
――導入後の効果についてどのように評価していますか?
近藤:
社員一同、以前より良くなったと高く評価しています。特にエンジニアからは、課題だったVPN接続中のセッション切断がなくなり、とても助かっているという声をもらっています。
コロナ禍以降、300ライセンスのうち230〜40のアカウントで同時に利用することも少なくないのですが、問題なくリモートアクセスを実現できています。ビデオ会議やクラウドストレージなどを利用するクラウド系のトラフィックを、スプリットトンネルによって直接インターネットに流せている効果が大きく、VPNとビデオ会議を同時利用するような状況でも、ストレスが軽減されたという声が届いています。また、情報システム担当の運用負荷も、個人的にはコストに見合った効果が得られていると感じています。
オンプレミスで機器をリプレースする方向が既定路線だったなかで、IIJから話を聞いて「これはいいな」と思い、即決で方向転換しましたが、結果として「やって良かった」です。
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
- 本社:東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー10階
- 創業:1993年12月
- 資本金:9億1,690万円(2020年12月末)
- 売上高:133億320万円(2020年12月期)
- 従業員数:社員963名、アルバイト37名(2020年12月末)
- ホスティングサービスやマネージドサービスなどの提供、インターネットインフラの開発・運用に加えて、インターネットを利用するうえで確かな身元識別を実現する電子認証サービスやソリューションを提供する。電子契約サービスの「GMO電子印鑑Agree」や、電子証明書認証局「グローバルサイン」などが代表的。2020年9月1日にGMOクラウドから社名を変更した。
- ※ 本記事は2020年10月に取材した内容をもとに構成しています。記事内のデータ・組織名・役職などは取材時のものです。