ページの先頭です
IIJ.news Vol.165 August 2021
IIJでは、2018年3月からスタートしたフルMVNOサービスにおいて、
継続的に新しい取り組みを行なっている。
今回は、SIM活用を中心にその一端を紹介する。
IIJ MVNO 事業部 副事業部長
中村 真一郎
MVNOサービスのサービス開発や市場開発を担当している。
特にフルMVNOサービスを活用した新しいビジネスモデル開拓(国内、海外)を行っている。
通常、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)は、ネットワーク設備などをNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクなどのMNO(Mobile Network Operator)から借り受けて、通信サービスを提供しています。一方、フルMVNOは、ネットワーク設備の一部あるいは要素を、他社に依存することなく自ら直接、運用してサービスを提供します。
特に、加入者管理機能(HLR/HSS)を自社で運用し、国際的な移動体通信における識別子であるMNC・IMSIを保有することで、独立した通信事業者となります。加入者管理機能を自前で運用することのメリットは大きく、「契約オペレーションの柔軟性」、「ネットワークの柔軟性」、「自由なSIMの形状」などが実現されます。
フルMVNOになることは、(SIMなどに代表される)モバイル・コネクティビティ・サービスを自分で作り、それを認証する機能を持つことと同義と言えます。そして、自らSIMを作ることができるのなら、お客さまが使いやすいかたちにしようというのが原点です。
IIJではサービス開始当初から、お客さまの用途に合った内容を、自由かつ安全に使っていただくと同時に、利便性を上げていくことをテーマに掲げています。
今回は触れませんが、SIMで提供されるサービスメニューやカスタマーインタフェース(ポータルサイト、APIなど)に関しても同じ考え方で取り組んできました。
当然ながら、物理SIMの提供をフルMVNOサービス開始当初から始めています。スマホに使っていただけるマルチFFSIMやIoT機器に組込むチップSIMを提供しており、これらは今でも主力のサービスとなっています。このような物理SIMは、当分のあいだ主流であり続けると考えています。
SIMの中身の情報を「プロファイル」と呼びます。IIJではプロファイルを使ったサービスも展開しています。
通信モジュール内にプロファイルを組み込むサービスにおいて、モジュールメーカと連携したサービスを行なっています。ソフトSIMではさまざまな工夫を凝らしており、例えば、海外で使えるプロファイルの利用、プロファイルをOTA(無線:Over the Air)で容易に選択できる手段の提供、対応可能なモジュールの拡充、閉域網や「IIJ IoT サービス」への連携などです。これらは、お客さまの目的用途に合わせて選択可能で、採用デバイスもGPS端末、ウェアラブル端末、産業用機器など多岐にわたります。
今後もモジュール内にSIM機能を組込むソリューションは広がっていくと考えられ、IIJではモジュールメーカと連携しながら、サービス展開を進めていきます。
eSIMは、ここ一年ほどでかなり普及したのでご存じの方も多いと思いますが、物理SIMのようにスマホに挿入する必要がなく、
その場ですぐに使えるようになるデジタルなSIMです。
IIJは、法人・個人向けに、スマホやPCなどeSIM対応デバイスでご利用いただけるサービスを展開しています。
eSIM対応デバイスは、これからますます増えていくことが予想され、利用シーンも広がっていくでしょう。IIJでは、法人・個人双方のニーズにお応えしていきたいと考えています。
現在、コロナ禍によりインバウンド・アウトバウンドが一時的に途絶えていますが、近い将来、その需要が戻ってきた時、SIM利用はeSIMに切り替わっていくと見られています。IIJはそのタイミングに向けてサービスの準備を進めています。
お客さまによっては(冗長性を確保するために)一枚の物理SIMで複数の回線サービスを使いたいという要望があります。例えば、プライベート網(Wi-Fi、プライベートLTE、ローカル5Gなど)に在圏中はプライベート網を、エリア外では公衆網を利用したいといった使い分けです。こうした機能を備えたSIMの提供も始まっています。
ここからは、SIMをより有効的に使っていただく工夫について述べたいと思います。
今後は間違いなく、さまざまな機器がネットワーク化されていきます。そして、多くのデータが収集・分析・連携されることで、新しい付加価値が生まれます。この流れを加速するには、簡単・安全・自由に、デバイスがネットワーク化されることが必須となります。そのためにIIJでは、プロファイルをさまざまなかたちで利活用できるプラットフォーム構築を進めています。以下では、そのアウトラインを紹介します。
技術的には新しいものではありませんが、IIJのSIMをWi-Fi認証機能として活用・展開することを検討しています。
SIM認証とは、モバイル通信を行なうためだけにSIMを利用するのではなく、モバイル以外の通信やサービス利用の際の個人認証にも活用することを指します。
従来、MNOが行なってきたSIM認証は、公衆Wi-Fi網に接続することで、モバイル網の負荷の軽減を目的としていました。他方、IIJのソリューションは少し異なる方向を志向しており、eSIMにその機能を付与することで、いっそうの利便性向上を目指しています。
一例として、法人向けeSIMのユーザが自社内Wi-Fiを自動的に利用できるようにしたり、インバウンド向けのeSIMにおいて来日時に観光場所やレストランなどで自由にWi-Fiを使っていただくことなどを考えています。
個人向けのeSIMをさらに幅広く活用していただくためのプラットフォームも準備しています。
eSIMの特徴は、利用者がネットワーク経由で、自由に、ほしいタイミングでSIMを購入・使用できることです。この特徴を活かせるよう、今後も自由度の高いサービスモデルを開発していきます。
以上、述べたようにフルMVNOを基盤としたサービスは今後も広がっていきます。SIMについても、一つの通信サービスで利用されるSIMから複数の通信サービスで利用されるSIMへ、物理的なかたちを持ったSIMからネットワークでやり取りされるSIMへと進化していくでしょう。
IIJはこのような通信サービスの進化を他のサービスと連携させることで、より使いやすいものにしていけるよう努めてまいります。
ページの終わりです