ページの先頭です
IIJ.news Vol.186 February 2025
デジタル通貨、ブロックチェーン、DAOなど、
デジタルエコノミーを取り巻く各分野には日々活発な動きが起こっている。
ここではディーカレットDCPの活動を中心に、そうした概況を見てみたい。
ディーカレットDCP 常務執行役員 営業本部長
新井 雄一郎
2025年2月、ディーカレットDCPは設立5周年を迎えました。2018年にIIJを含む19社の共同出資会社としてディーカレット(現在は株式譲渡されS.BLOXへ社名を変更)が発足し、暗号資産交換業のサービスを開始し、ディーカレットDCPは2020年にその子会社として、デジタル通貨事業の本格立ち上げのため設立されました。
我々が取り組むデジタル通貨事業は、実証実験や国内企業11社とともに実施したデジタル通貨勉強会、その後のデジタル通貨フォーラムにおける活動などを経て、昨年夏に「デジタル通貨DCJPY」の商用サービスを実現する運びとなりました。
DCJPY初の商用取引は、IIJの白井データセンターキャンパスを利用するお客さまに提供している非化石証書の代理調達サービスに付随するものです。同サービスにおいて、非化石証書のデジタルアセット化およびその決済にDCJPYが活用されました。
我々が開発するデジタル通貨DCJPYは、最近では「トークン化預金」とも呼ばれており、銀行預金をブロックチェーン上でトークン化することにより、銀行預金のセキュアな仕組みとプログラマビリティの両立を実現したものです。取引所での現金から○○コインといった暗号資産への交換や、ATMやインターネットバンキングから振り込み作業をする必要がなく、プログラムによって商流と一体化して自動決済を行なったり、決済に情報を付加したり、使途を制限できます。
現時点でDCJPYを発行できる企業はGMOあおぞらネット銀行のみですが、大手銀行・ネット銀行・地方銀行など、さまざまな金融機関と発行に向けた具体的な協議を進めています。多くの金融機関に利用いただき、より幅広い企業・個人の方にDCJPYを活用いただける未来を実現したいと考えています。
アメリカではトランプ大統領が再選しました。昨年の大統領選挙において戦略的備蓄という考えを表明したことで、ビットコイン価格が過去最高値を度々更新し、1ビットコインが昨年12月に1600万円、今年1月には1700万円に到達しました。ビットコイン以外の暗号資産も軒並み価格が上昇し、アメリカの大手資産運用会社が提供するビットコイン上場投資信託(ETF)の取引額も大幅に増えたというニュースもありました。
アメリカ大統領選挙の動向にともない暗号資産関連のマーケットが大きく動くのを目の当たりにし、ブロックチェーンが実社会にも浸透しつつあることを実感します。
日本企業においても医療・医薬品分野や製造管理など、投資・送金・決済以外の分野でブロックチェーン技術を取り入れる企業が増えてきました。我々が事務局を務め、デジタル通貨で社会課題の解決や日本経済の発展を目指すデジタル通貨フォーラムにも、100以上の金融機関・企業・自治体・団体が参加しています。参加企業の業種は多岐にわたり、多種多様な関心や期待が感じられます。
また、我々が昨年行なったデジタル通貨の意識調査アンケートでは、26パーセントの企業がデジタル通貨について1〜3年以内の活用を目指したい、43パーセントが自社の現状の業務・商取引に適用できそうだ、と回答しており、想像以上にデジタル通貨の導入に対する関心が高いことがわかりました。
デジタル通貨の意識調査結果(抜粋)総数97社
デジタル通貨フォーラムでは昨年5月、新たにインボイスチェーン分科会が発足しました。サイロ化されている各会計サービス・決済サービスの統一規格の検討や、法人企業間の決済に関する課題の解決方法について議論・検討をするため、ソフトウェアベンダのほか、小売りやメーカなども参加しています。
ブロックチェーン技術を活用した業界標準システムを構築することで、システム間連携にあたり担当者が手動で行なっている業務を自動化し、各企業が利用している既存システムを置き換えることなく、契約から決済までシームレスな連携を実現できます。
インボイスチェーン分科会ではこれまでの活動を経て、現状の業務の課題や目指すべき企業間決済のイメージ、そのために必要な取引データ標準化の考え方などをまとめ、今年2月に「インボイスチェーン分科会STEP1報告書」を作成・公表しました。今後、PoC(概念実証)の準備フェーズであるSTEP2、PoCフェーズのSTEP3と、企業間取引や精算業務の効率的な発展を目指して段階的に活動し、将来は多くの企業で利用される商用サービスを提供できるよう、参加企業一丸となって推進していきます。
商用化に向けた取り組みの1つとして、クリエイター向けDAO(分散型自立組織)の開発に着手しています。DAOは、管理者が存在せず、参加者が協力して運営や意思決定などを行なう新しい組織です。ブロックチェーンを用いており、組織運営の高い透明性や、トークンを活用することで参加者が投票や意思決定に参加できる点などが特徴です。
これまで映像業界においては、クリエイター同士で作品を批評し合い、制作活動につなげていく場がない、という課題がありました。このクリエイター向けDAOでは、DAO参加権を購入したクリエイターが互いの作品の審査および投票ができる仕組みを提供することにより、クリエイターによる民主的な投票や連携強化の機会を創出します。また、パブリックブロックチェーン*でDAOを構築するため、顧客の半数以上を占める外国人の参加も可能となるうえ、参加権購入などで発生する決済にDCJPYを導入することにより、暗号資産に不慣れな日本人の方もDAOに参加しやすくなるといった効果が期待できます。
今回ご紹介した案件以外にも、新たなビジネスの創出に向けて、ディーカレットDCPではさまざまな取り組みを続けています。DCJPYネットワークはまだ動き始めたばかりですが、これからも社会の進化の「触媒」となり、日本の社会DXと経済発展に貢献できるよう努めてまいります。
ページの終わりです