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IIJ.news Vol.187 April 2025
DX推進が声高に叫ばれているが、進捗状況が芳しくないケースも散見される。
本稿では、DXが停滞している要因を見たうえで、IIJが新たに提案するプラットフォームについて述べる。
IIJ 取締役 専務執行役員 ビジネスユニット長
北村 公一
IIJは1992年の創業から今日に至るまで、デジタルワークプレース(以下、DWP)と呼ばれる領域で成長してきました。DWPとは、お客さまのOA環境をセキュアかつ快適に保つITプラットフォームの提供を意味します。リモートワークが当り前になった昨今、どこからでも個々のワークスタイルに最適なOA環境にセキュアにアクセスでき、ストレスなく仕事に集中できることは、業界・業容にかかわらず、最優先されるべきITプラットフォームの要件となっています。
ところが現在は、ITがOA環境のみならず、企業のビジネスそのものに組み込まれ、ビジネスの拡大や新規ビジネスの創出のドライバーになっています。それを象徴する言葉が、DX(Digital Transformation)です。デパートや小売店における対面販売からネット通販への移行や、銀行の窓口業務がインターネットバンキングにシフトしているのも、DXの一例です。DXは企業のビジネスに直結するため、以前は情報システム部門がOA環境を統括していたのに対して、近年のDX推進においては事業部門・開発部門が主導的役割を果たしています。
このように大多数の企業は生き残りをかけてDXに取り組んでいるのですが、我々の調査によると、その多くがDXの推進に苦戦しており、大半の事例は、ペーパーレス化やRPAの導入、せいぜいクラウドシフトによるレガシーマイグレーションにとどまっており、DXが本来目指すべき新しいビジネスの創出やビジネスモデルの変革はなかなか実現していないのが実状です。
この苦戦の主要因は、DXで必要とされる、さまざまなクラウドサービスの利用やクラウドネイティブ開発技術の複雑さにあると考えられます。例えば、日常の業務ではMicrosoft 365を使う、仮想デスクトップはAzure VirtualDesktopを使う、AIではAzure OpenAIを使う、データ分析はGoogle Cloudを使う、クラウドネイティブなアプリケーション開発のコンテナ基盤にはAWS ECSを使う……といった活用が当り前になった今、特定の機能に特化したクラウドを使ったり、用途によってクラウドを使い分ける「マルチクラウド」の導入・運用が一般的になっています。ところが、複数のクラウドを使いこなすことは非常にむずかしく――多岐にわたるアクセス先や経路を含むマルチクラウド環境のセキュリティ問題、マルチクラウド環境を可視化する監視・運用、デプロイ先が増えることにともなう煩雑さ、さらには複数のクラウドベンダとの契約業務に要する手間……等々、さまざまな困難を挙げることができます。
こうした状況を鑑み、IIJはこれまで多くのお客さまに導入いただいたDWPを拡充した新たなプラットフォーム「DXプラットフォーム」(以下、DXP)の促進をIIJグループの中期計画(2024年度~2026年度)の中核に位置づけ、DXPの提供を開始しました。我々は自社クラウド「IIJ GIO」をはじめ、Microsoft 365、Microsoft Azure、Amazon Web Services、Google Cloudといった数多くのマルチクラウドの導入・運用を手掛けてきました。今後、DXPに求められる機能はますます増えていくと予想されますが、まずはマルチクラウドMSP(ManagedService Provider)としての支援からスタートします。
DXプラットフォームはIIJのみならず、大手SIer、ハードウェアベンダ、クラウドベンダからも提案されていますが、それらの大半はハードウェア、クラウド、AI、IoTなどの要素技術を提供したり、「複数の要素技術を組み合わせて、顧客企業にDXの実現を考えてください」といった内容にとどまっているのではないでしょうか。それに対し我々は、本当に必要とされている「DX導入・運用の悩みを解決する支援の提供」を目指します。要素技術(モノ)の提供ではなく、お客さまのDX推進を後押しし、新しいビジネス(コト)の実現に寄与するソリューションの提供に全社一丸となって取り組んでまいります。
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