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IIJのDXプラットフォーム DXPが実現するもの

IIJ.news Vol.187 April 2025

今、なぜ、「DXプラットフォーム」を開発したのか?
ここではIIJが志向する新しいプラットフォームのコンセプトを紹介する。

執筆者プロフィール

IIJ クラウド本部 副本部長/ネットワーク本部 副本部長/DXP戦略室長

吉川 義弘

DX推進を阻む課題とIT部門の現状

まず「DXプラットフォーム」(以下、DXP)を開発した背景を説明します。日本社会は「2025年の崖」と呼ばれる問題に直面すると言われています。これは、既存のITシステムのブラックボックス化に加えて、人材の不足がDX推進の大きな阻害要因となる。そして、この課題が解決できない場合、今後5年間で最大12兆円の経済損失が生じるかもしれない、という懸念です。

こういった背景から、我々はIIJのお客さまであるIT部門の方々を対象に、DXに関する取り組み状況についてアンケートを行ないました。その結果の一部を紹介します。

DX推進におけるIT部門の役割と課題

アンケートの結果(図1)から、IT部門が「できている」と考えているDX推進の取り組みは「ペーパーレス化」や「業務環境のオンライン化」といったものが多く、逆に「できていない」ものとしては「新しいビジネスの創出」や「既存ビジネスモデルの変革」などが多いことがわかりました。

これはすなわち、企業におけるIT部門のおもな役割は、従業員にIT環境を提供することであり、クラウドを活用して事業変革を目指すといったDX本来の目的に関しては、事業部門が主体となって進められている、と推察されます。

しかしながら、事業部門主体でDXが進むと、セキュリティ、システム運用・監視、社内システムとの連携といった、事業に直接関連しない分野の検討が後回しになったり、漏れてしまいがちです。こうした状況が、後々になって手戻りを招いて、DXの推進スピードを落としてしまったり、場合によっては、セキュリティリスクを招いてしまう、といった事態にもつながりかねません。

IT部門の変革と「ガードレール」の重要性

こういった現状を受けて、IT部門の役割が変化を求められていると考えられます。DX推進を成功させるためには、IT部門が従来の役割を超えて事業部門と協力し、DX推進に積極的に関与する必要があります。

ところがこうした体制を敷いても、IT部門はセキュリティや運用のガイドラインといったルールを作り、それらを遵守して実装することを事業部門側に求めるケースがよく見られます。

これらのルールを機能として実装するには、ビジネスロジックとは異なるスキルや知識が必要です。そのため、事業部門に大きな負担がかかり、本来注力すべきビジネス変革のためにリソースを割けなくなるといったことが起こり、その結果、DXが進まないという問題が発生します。

こうした状況を避けるには、IT部門がルールを機能にまで落とし込んで、それを基盤化し、事業部門に提供していく必要があります。言い換えると、事業部門が基盤を利用するだけで「守られている」という状態を実現する「ガードレール」を提供する必要があるのです。

DXPが解決する課題と提供する価値

ガードレールをIT部門が基盤として提供するのは理想的ではありますが、実際には大変です。基盤として提供するには、セキュリティ、運用、ガバナンスなど各分野の専門的な知識やノウハウが必要になってきますが、実際にそのようなスキルを持った人材は、IT部門になかなかいないというのが実情ではないでしょうか。

IIJが提供する「DXP」は、こうした課題を解決するためのプラットフォームです。DXPは、環境、オペレーション、セキュリティ、ガバナンスの各要素を統合した「ガードレール」をマネージドサービスとして提供します。IT部門はDXPを活用することで、少ない負荷でガードレール機能を持った基盤を作ることができます。そして事業部門のDX推進を効率的に支援できるようになります。

DXPを支える4つの要素

IIJはこれまで、働く人にフォーカスしたプラットフォームである、デジタルワークプレース(以下、DWP)を提供してきました。DWPは、いつでも・どこからでも「セキュアかつ快適」に仕事ができることを目指したネットワークプラットフォームです。DWPはこうしたコンセプトのもと「エンドポイント」、「ID」、「ネットワーク」の観点から多くのサービスを提供してきました。

DXPは、DWPに「マルチクラウド」の要素を加えた、新たなプラットフォームです。(図2)

図2 IIJが提供するDXプラットフォーム(DXP)の全体像

IIJが目指すマルチクラウド

ここからは「マルチクラウド」について解説します。IIJでは、MicrosoftAzure、Amazon Web Services(以下、AWS)、Google Cloudといったパブリッククラウドの導入を手掛けてきましたが、その過程で多数のお客さまから「複数のクラウドを使いたい」という声が寄せられるようになりました。例えば、仮想デスクトップはAzure VirtualDesktopを使い、AIはOpenAIを活用し、システム基盤はAWSに構築する、といった具合に複数のクラウドの良いところを使いたいというご要望です。

一方、複数のクラウドを使えば選りすぐりの機能を使えるというメリットはあるのですが、管理する対象も増えてしまうという懸念もあります。例えば、アクセス先のクラウドが増えることによるセキュリティリスクの増加や、運用対象が増えることによる運用負荷の増大などです。そして、こうした課題を解決してくれるのが「ガードレール」プラットフォームなのです。

マルチクラウドを効果的に活用するためのCAF

しかしながら、システムをクラウド化するためには、こうしたガードレールの機能だけでは解決できない課題も出てきます。例えば、クラウド化を推進する社内体制をどのように整えればいいのか、オンプレミスの移行計画をどのように立てればいいのか、ガードレール機能を使うための前提となるセキュリティガイドラインをどのように策定すればいいのか、といった点です。

IIJはこれらの課題を解決し、マルチクラウドを効果的に活用するためのガイドをCloud Adoption Framework(以下、CAF)として定義しています。CAFはマルチクラウドを活用するうえでの実効的なガイドラインであり、主要な7つの要素から構成されます。

IIJでは、CAFに対応したサービス・ソリューションを「マルチクラウドMSP」として提供しています。「環境」、「オペレーション」、「ガバナンス」、「セキュリティ」といったガードレールの要素はマネージドサービスとして提供しながら、その導入のための「ビジネス戦略・計画」、「組織・人材」、「導入」といった要素はコンサルティング・インテグレーションのかたちで提供しています。

DXPが目指す世界

本稿では、DXに対する考え方から、DXPのコンセプト、さらにマルチクラウドMSPについて具体的に説明してきました。

IIJは、DXPを通じてIT部門を支援し、企業におけるDX推進を加速させることを目指しています。またDXPでは、現在の課題を解決するだけでなく、さまざまなデータを統合的に可視化・分析する機能や、データ活用ソリューションなども提供していく予定です。今後のDXPの進化にぜひご期待ください。

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