ページの先頭です
IIJ.news Vol.174 February 2023
モバイル関連技術は、我々の暮らしにもっとも身近であると同時に、急速に変化・発展している領域でもある。
ここでは、「マルチプロファイルSIM」や「SA」など最新動向を中心に解説する。
IIJ MVNO事業部 副事業部長
安東 宏二
IIJ MVNO事業部 技術開発部 シニアエンジニア
柿島 純
昨今のモバイル業界は、LTEと5Gを中心に、携帯電話会社など複数の事業者が独立したモバイル網を保有している、いわゆる“ヘテロジニアス”な環境にあります。こうした状況を受け、複数のモバイル網に1枚のSIMで接続できる「マルチプロファイルSIM」に我々は注目し、検討を開始しています。
マルチプロファイルSIMのメリットの1つに、あるモバイル網で通信障害が長時間継続した場合でも、別のモバイル網に接続することで通信を継続できる点が挙げられます。
もう1つ、我々が注目している技術に「SA」(Stand Alone)があります。SAは5G通信に不可欠なコア装置で、全て仮想化基盤上で動かすことができます。そのため、クラウド仮想基盤上で動くアプリケーションと親和性があり、これまでにない革新的なモバイルサービスの創出を目指して検討を進めています。
革新的なモバイルサービスを創出する土台作りとして、我々はここ数年、精力的に特許出願を行なっており、MVNO事業部は現時点で10件以上の特許を出願中です。これらはおもにマルチプロファイルSIMやSA関連ですが、例を挙げると、クラウドアプリケーションの特徴に応じて最適なSAのコア装置の配置が可能な発明(MEC)、クラウドアプリケーションの品質に応じて無線リソースを制御する発明(ネットワークスライス)、SAサービスを電子通貨でユーザが使いたい時だけ課金できる発明、それぞれ異なる事業者が保有するLTE網とSA網をネットワーク側から自動で切替えられるマルチプロファイルSIM関連の発明などです。ほかにも、ID認証とSIM認証を組み合わせた多要素人認証や、eSIM関連の発明も特許出願済みです。また、すでに複数の特許出願に関して査定が下され、IIJに特許権が付与されています。
従来のIIJモバイルサービスは、携帯電話会社のサービスの再販的提供が主でしたが、2018年にフルMVNOになったことで、自前でサービス開発ができるようになりました。今後もフルMVNOで培った知見を活かして、IIJの強みであるクラウドサービスやIIJ IDサービスなど、他のIIJサービスとの連携を図りつつ、独自のモバイルサービスが展開できるよう努めてまいります。
昨今のコロナ禍以降、人の分散と情報の集中を実現するデジタル技術とネットワーク技術の進化により、テレワーク、オンライン授業、オンラインイベント、生産性を高めるためのデジタルシフトなど、新たな利活用が生じています。
こうしたなかで求められる技術要件は、単体の技術で一点突破するようなシンプルでわかりやすいものではなく、複数の技術要素を組み合わせることで成り立つものと言えます。
先に述べた通り、IIJでは新たなユースケースを想定して、その要素となり得るモバイル技術の特許出願を積極的に行なっています。モバイル通信では、個体を特定するための識別子、偽造・不正利用を防ぐための暗号化、通信を確立するための手順・規約、通信そのものを行なうための交換・伝送、大量の利用時でも安定した通信の継続的な提供など、多くの技術を必要とします。そうした際にも、IIJが培ってきたネットワーク技術、クラウド技術、セキュリティ技術など、幅広い技術を融合することで、独自のアドバンテージが得られると考えています。
一方、SAは、今までの専用アプライアンスを活用するのではなく、クラウドネイティブ環境でソフトウェア/アプリケーションとして具現化していくことを目指しており、安定的かつ上質なサービス提供を継続していくために、これまで以上に総合的な運用力が求められ、我々はその条件をクリアーできるよう努めてまいります。
モバイル通信は、いつでも、どこでも、どんなモノでも活用できる通信手段として、日々の生活に欠かせない存在になっています。IIJは今後もモバイル通信技術を発展させ、皆さまの暮らしを支えていきたいと考えています。
ページの終わりです