お客さま探訪 vol.7 TOWA株式会社

京都市には「その道のナンバーワン」であるメーカがいくつもあります。今回のお客さま「TOWA株式会社」（以降TOWA）も、その1つです。自社の強みを見定め、新しい技術を積極的に取り入れ、質の高い製品を作り上げて、世界中で営業活動を展開する企業が、京都市には集まっています。余談ですが、京都市の市内総生産の統計を紐解くと、もっとも比率が高い産業は、観光・サービス業ではなく、製造業なのです。

TOWAは1979年に創業したメーカです。金型の超精密加工技術を核として事業をスタートし、半導体製造装置の自動化により大きく成長しました。TOWAの主力事業は半導体製造工程のなかの、半導体を樹脂で覆って封止する「モールディング」と、モールディング済の半導体を切り出す「シンギュレーション」を行なう装置の製造販売です。

TOWAは、3度にわたる「モールディング革命」を起こし、業界を牽引し続けています。2009年に発表した「コンプレッション方式（第3次モールディング革命）」は、樹脂の流動をなくしてデリケートな半導体チップへのダメージを防ぐことに成功しました。この方式は、自動運転、5G、AI、IoTなど最先端の半導体製造になくてはならない存在となっています。また、コンプレッション方式は従来と比べ、CO₂排出量を約7割削減でき、封止工程で廃棄する樹脂もゼロにできるため、サステナブルな技術でもあります。

TOWAは1990年代中盤から海外に生産拠点を構え、2000年代中盤からは海外各拠点でフィールドサービスを開始し、事業の軸足を早くからグローバルに広げてきました。現在、アメリカ・マレーシア・韓国・中国・台湾・ドイツなどに拠点を構え、売上の8割以上が海外顧客です。日本にあった半導体産業の中心は、韓国・台湾・中国へと移ってしまいましたが、TOWAは同時期、世界各地に生産・サポートの拠点を広げました。結果、昨今の半導体不足のなか飛躍的に高まっているモールディング装置およびシンギュレーション装置に対する需要にも対応できました。

“所変われば品変わる”のは、半導体業界も同じです。TOWAは技術力をコアとしたソリューション型の企業として、ただ既製品を販売するだけでなく、お客さまごとの最適解を提供し続けています。代表取締役社長の岡田博和氏は「前向きに挑戦することによる失敗やトラブルはウエルカム。どんどん失敗してほしい」と語り、若手社員にも大きな裁量を与えています。お客さまの要望を実現するために、世界各地で挑戦する経験がTOWAの人と技術を育てています。

TOWAはコロナ禍によるWEB会議とリモートワークの全社的な急拡大によりひっ迫する国内外のネットワークに関して、2020年夏から見直しを開始しました。そして、国内では「IIJ Omnibusサービス」を、海外ではIIJグローバルが提案した「Cato Cloud」を採用しました。2021年7月、中国の新工場への導入を皮切りに、全拠点のリプレースが進行中です。また、セキュリティと利便性の高度な両立を実現するため、セキュリティ基盤の刷新にも力を入れており、こちらもIIJグループが支援しています。

TOWAのシステム担当者は「IIJグループの迅速かつ的確な支援のおかげで、急激な環境の変化にも対応できています。IT環境の刷新を早々に完了させ、今後はよりビジネスに入り込んでDXを進めていきたいです」と語っています。今後10年の指針となる「TOWAビジョン2032」でも、付加価値を創造するための重要課題としてDXが掲げられており、全社あげてDXに邁進しています。

身近な電子機器のほぼすべてに入っている、といっても過言ではない半導体。しかし、その製造工程ではここで紹介したような試行錯誤が行われてきたことや、より良い生産体制を目指してDXが進められていることも、取材者はこれまで知りませんでした。今回の「探訪」を通して、身近な電子機器を見る目がちょっとだけ変わった気がします。